「お。久しぶりだな、チハル」
「あ!お久しぶりですサクモ先生!カカシも久しぶりだね、元気だった?」
「うん」


にこっ、と目を細めて俺の頭をがしがし撫でるのはチハルさん。
父さんの弟子で俺の七歳上の上忍。“白い牙の愛弟子”ってことで木ノ葉の中で知らない人はいないほどで、父さんも認めてる人。それから、俺が密かに憧れている人でもある。


「元気にしてたか?とは言いつつ噂は聞いていたんだがな。ずいぶん活躍してるそうじゃないか」
「いやいやそんな。先生の足元にも及びませんよ」
「そんなことないさ。もう世代交代の時期なのかもなぁ」
「まだダメですよ先生。先生にはまだまだ前線でばりばり働いてもらわなきゃなんないんですから、カカシのためにも!」
「はは、それもそうだな」


そんな二人の会話を聞きながら、今日のチハルさんはいつもと違うなぁと思ってじっと顔を見てしまう。そんな俺を不思議に思ったのか、チハルさんは俺の顔をぐいっとのぞき込んだ。


「ん?カカシどうした?」
「…なんか、いつものチハルさんと違う気がする」
「え、そう?私何かおかしいかな」
「あぁ、口布じゃないか?カカシはお前がそれをしてるのを見たことがなかっただろう」
「あーそういえば。ほら、これでいつもの私でしょ?」


そう言って口元にあった布を下ろすとにっ、と笑ったいつものチハルさんになった。


「なんで今日はそれしてるの?」
「これから任務だから」
「任務のときはそれをするの?」
「そうだね。ま、オンとオフの切り替えってとこかな」
「…ふーん」


なんか、格好良い。
口布ってのをしてるチハルさんはいつもとはちょっと違う雰囲気になる。いつものニコニコ優しいチハルさんじゃなくて、なんかきりっとしたような引き締まったようなそんな感じ。これが、忍の顔をしてるチハルさん…。


「チハル、時間は大丈夫なのか?」
「え?…あっ、やばい!それじゃあサクモ先生、失礼します!」
「気をつけてな」
「またね」
「はい!またねカカシ!」


そう言って下ろしていた口布をぐいっと上げて「どろん!」って煙と一緒に消えたチハルさん。
その跡を眺めながら「あいつは…」と呆れたように笑っている父さんの服の袖をくいっと引っ張った。


「父さん」
「ん?どうした?」
「俺も口布したい」
「え?」
「俺も口布したら、チハルさんや父さんみたいに強くなれる気がする」


そう言って顔を見上げたらぽかんとした顔の後ははっ、と笑った父さん。


「お前がチハルみたいになるにはもうちょっと修行がいるかな」
「…」
「はは、そんなむくれた顔するな。よし、じゃあ今から口布付きの忍服を買いに行こうか」
「!…うん!」


チハルさん、待っててね。
きっと、すぐ追いついてみせるから。








「へぇ。そんな話初めて聞いた」
「そりゃあ今初めて言ったもん」
「それじゃあ、今のカカシを作ったのは私でもあるわけだ?」
「……まぁ」
「おいおい〜、照れるなって〜」
「…別に照れてなんかないし」



いつまでも俺を子ども扱いするこの人――恋人であるチハルさんには一生敵う気がしない。

fin.


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