「…ふぅ」


夜通しの任務を終えて、家に帰って来たのは午前五時。
帰ってきてすぐくたくたの身体を引きずってなんとかお風呂に入って、ご飯も食べずに寝室に向かった今が午前五時半すぎ。髪、もう乾かさないで寝よう。綱手様も鬼ではないのか今日はさすがに休みをくれたし、寝れるだけ寝てやろう。誰にも会わないだろうし、寝ぐせまみれでもなんでもいいや。そんなことを思いながらがちゃりと寝室の扉を開ければ、そこには上半身裸の大男がぐーすか寝てるわけで。


「…風邪引くでしょ、さすがに」


真夏とはいえ朝方は割と涼しいってのに、扇風機つけっぱなしで大口開けて寝てるこの男が私の恋人、はたけカカシ。
無防備すぎるその姿にひとつため息を吐いてから、彼の足元でぐちゃぐちゃにまるまったタオルケットをかけなおそうと手に取った。


「…んー」


私の気配を感じたのか、眉間にしわを寄せて寝返りを打って唸ってみるけどすぐさま夢の中。
素肌がさらされたカカシの上半身には、数え切れないほどの傷がある。掠っただけみたいなのが大半だけど、中にはもう一生消えないような深い傷も。


カカシは幼いころから周りに期待されて、ずっと最前線で戦ってきた。
だから、何度も死にかけてる。

カカシがチャクラ切れで入院したのはもう数え切れないけど、生死の境をさまようほどの深傷を負って入院したのは今まで何回あったっけ。
ここ、右のお腹にある傷は暗部のとき、新人の子を庇ってできた傷。テンゾウたちに担ぎ込まれたカカシが手術室から帰ってきたとき、さすがに心配しすぎて怒鳴っちゃったっけ。

こんな風に、彼に刻まれた深い傷跡は、全部何でできたものか知ってる。それだけこいつとは長い付き合いなわけで。暗部時代からずっとこいつが無茶するのを見てきたから、死に急ぐのを見てきたから、ナルト達第七班の先生になって、こうして無防備にゆっくりと楽しむように生きるようになったカカシに心の底から安堵している私がいる。

まぁそれでもやっぱり、チャクラ切れで帰ってくるのは変わらないんだけど。それでもあの頃とは違うから、笑って見てられる。カカシから教え子たちのことを聞くのが今の私の楽しみだからね。

そんなことを思いながらタオルケットをかけると、ゆっくりと開いたカカシの薄目と目が合った。


「…ななみ?」
「うん、ただいま」
「おかえり」


そのままひょいひょい、と手招きされて、カカシの隣にもぐりこんだ。
寝起きでぽかぽかしたカカシにすり寄りながら、極端な疲れからすぐ襲ってきた睡魔に臨戦態勢になる。


「なに、もう眠いの」
「…んー、疲れたから…」
「そっか、夜通しだもんねぇ。お疲れさん」
「ん」


ぽんぽん、とカカシの手が頭に当たる感覚に、どうにも睡魔が勝っちゃいそう。


「もう寝な。俺も今日は休みだからゆっくりするよ」
「そう、なんだ…」


カカシも休みなら、一緒に出掛けたいな。買い物にも行きたいし、ご飯だって外に食べに行ってもいい。それより、久しぶりにカカシとデートしたいなぁ。
カカシと一緒にしたいいろんなことが頭をよぎりながら「おやすみ」というカカシの優しい声に眠りについた。





fin.


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