『強い女になれ、チハル』


幼い頃に両親を失い、そしてそんな私を支え続けてくれた恋人まで亡くし、塞ぎ込んだ私に師が言った言葉。私が生きる意味も、理由も、すべてを私にくれたのは師だった。


『泣けるならば泣け、だがそのあとにはいつか、笑え』


そんな師の大きな背中に追いつくために、師の隣に立って戦えるような忍になるために、私はただひたすらに戦った。来る日も来る日も、休むことなく任務に就いた。放浪の旅を続ける師に変わって、師の大切に思う木ノ葉隠れの里を守るために。



「…先生、お久しぶりです」



里の外れに弟弟子が建てた、“師”と刻まれた石の前に、持ってきた花と彼の好きだった酒を供えた。


自来也先生。先生がそちらへ行ってしまってからずいぶん経ちましたが、変わらずやっておられますか?
そちらには先生の大切な人がたくさんいて積もる話もあると思いますが、思い出酒はほどほどになさってくださいね。
若い綺麗な姉ちゃんのケツを追いかけてスケベな顔をするのも程々にしてください。
普通にしていれば、先生は誰よりも格好良い男なんですから。


手を合わせて目を閉じながら、師に言葉を送ってくすりと笑った。


五代目から先生の訃報を聞いた日、私が大切に思う人は私より先に行ってしまうんだと悟った。こんなに悲しく苦しい思いをこれ以上したくない、そう思って、大切な人を作りたくない、とさえ思った。

そんな私を救ったのは、やはり空へ旅立ってしまったはずの自来也先生だった。


“自来也からの伝言だそうだ。笑え、とな”


珍しく瞼を腫らした五代目からの言葉に、私は声を上げて泣いた。泣いて泣いて泣きじゃくった。そして最後は先生に二度も言われた通り、下手くそにでも笑った。笑って笑って、「見ててくださいね」と、先生のいる空に拳を突き上げた。



「…自来也先生。私、笑いますよ。これから先、どんなに悲しいことやつらいことがあっても、最後は必ず笑います。だから、先生、」



「そこから見守っててくださいね、ずっと」
すっと立ち上がって、あの日と同じように空に拳を突き上げて笑うと、「やはりおまえには笑顔が一番似合っとるのォ」って先生が豪快に笑う声が聞こえた気がした。




お誕生日おめでとうございます、先生。
Fin.


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