「カカシィ!勝負だ!!」
「…ジャンケンでいい?」
「またそれか!!!」


もうすぐ待機所に着くと思って少しだけワクワクしてたら聞こえてきた大きいのとめんどくさそうな声。昔なじみの声にくすりと笑いを漏らしながら、首にぐるぐる巻いたマフラーに口元を埋めなおして扉を開けた。


「お疲れ〜」
「お疲れさん」
「おう、お疲れさん!」
「なんなの今日まじで寒すぎじゃない?」


待機所の中にいたのは、思った通りガイとカカシ。そんな二人に片手を上げて真ん中にあるストーブに手を近づけながら身震いすれば、窓の外を眺めるカカシが儚げに言う。


「今日は大寒波らしいからね〜」
「げ、まじ?どーりで寒いわけだよ」
「そんなに寒いならこの俺と青春の汗を…」
「昨日の夜も今日の朝もニュースで言ってたから。ちゃんとテレビつけなよ」
「めんどくさいんだよね〜…あ、じゃなかった。節約です」
「いまさら弁解しても遅いから」
「俺を無視するなァァ!!」


いつものようにカカシと阿吽の呼吸で無視してると、案の定いつものようにガイが半泣きになりながら叫んだ。その姿を見てカカシと顔を見合わせくすくす笑ってると、すぐに立ち直ったガイが私の腕を掴む。


「チハル!ちょっと付き合え!」
「はぁ?私今来たところなんだけど、」
「いいから付き合え!!」
「えぇっ、ちょ……ストーブ〜!」
「はい、いってらっしゃーい」


満面の笑みでひらひらと手を振るカカシを睨みつけた。そのまま引っ張って連れてこられたのは火影岩の上。ただでさえ寒いのにその上こんな吹きっ晒しの、真夏でも涼しいところに連れてくるなんて何考えてんだかこの男は。


「うぅ、さむ…」
「…これを着ろ」
「ありがと。あんたって意外と気が利くよねー」
「意外とは余計だ。お前にはいつもそうしているだろう」
「…たしかに」


そう言って私をぎゅっと抱きしめるガイはぽかぽかしてる。こんな寒いときに上着まで貸してくれてるのに不思議だなぁ。と思いつつ、たしかにいつもガイにはなんだかんだ甘えてるな、とも思う。


「チハル」
「ん?」
「…あまり俺抜きでカカシと仲良くしないでくれ」
「!」
「あいつがいいやつだということはもちろん知ってる。なんたって俺の永遠のライバルだからな。俺達は同期だから、昔からの仲だということもわかってる。…だがお前が俺を無視してあいつと話してるのを見ると、こう…胸がもやもやするんだ」
「…」


私の肩に顔を埋めて珍しいくらい弱々しく言うガイに言葉を失った。
どんどん、私を抱きしめる力が強くなる。


「お前が俺を無視するのも照れ隠しだと分かってるが、それでも嫌なんだ。いくらカカシとはいえ俺以外の男と親しげにしないでくれ…」
「…ガイ」
「…こんなことでぐちぐち言うなど小さい男だとわかっている。だがもやもやが取れないんだ。前は小さかったのに日増しに大きくなってくるんだ」
「ねぇガイ…」
「俺はどうすればいい?どうすればこのもやもやはなくなるんだ?教えてくれ、チハル」
「それは、嫉妬だよ」
「……しっ、と?」
「そう、嫉妬」


ようやく抱きしめる力が緩んだ隙に少しだけ身体を離して、ぽかんとするガイの頬に手を添えてにっこり笑った。


「私がカカシとか、他の男と話してるときに胸がもやもやするんでしょ?」
「…あぁ」
「でも、じゃあたとえば私が、親戚のおじさんとか、いとこのお兄ちゃんとかと話してるときあるでしょ、そのときは?」
「特に何とも思わん、むしろ俺とも仲良くしてほしい。いずれ俺も家族になるんだからな」
「……だから、それは嫉妬だよ。そのもやもやの正体は、嫉妬。わかる?」
「…そうか、これが嫉妬か、」
「嫉妬してもらえるのはそれだけ愛してもらってるってことだから、私は嬉しいよ。それにガイは小さくなんかない。誰よりも熱くて、大きい心を持ってるよ」
「…恩に着る、チハル」


やっと納得した様子のガイは、いつもの元気はつらつな笑顔に戻る。


「…っていうか、あんた本当に寒くないの?」
「ん?なんだ、寒いのか」
「当たり前でしょ!今日大寒波来てるってさっきカカシが…」
「……俺はまた嫉妬した。お前から男の名前が出てくるだけで嫉妬した」
「え、ちょ…今度はどこ行くの!?」
「俺の家だ!こたつに入って鍋でも食いながら愛を深めようではないか!!」
「いーーやーーーーーー!!!」
「!?何が嫌だった!?教えてくれチハルーー!!!」





fin.


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