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  真島吾朗編


「なんや椿、今日はエライご機嫌やのぅ…。」

「こうして真島さんと会うのが久しぶりなんで。」

「ほぉ…。」

いい感じにアルコールが回っていたせいかつい口を滑らせてしまった。言った後にすぐにまずいという気持ちに。顔が赤くなっていると思うが、酔いのおかげで気づかれていないだろう。ハハハと笑いながら私は小皿に入ったナッツを口に運ぶ。真島さんは煙草に火を点けて紫煙を燻らさせている。今日もかっこいいな、真島さん。そっとその横顔を一番近くで堪能させてもらう。

「俺も楽しみやったんやで。」

「えっ…。」

トントンと灰皿に灰を落としながら私の顔を見て笑う真島さん。いつもの冗談の延長だと思いながら微笑み返すと真島さんは急に真面目な顔に。吸い寄せられるようなその眼差しに反射的に顔を反らしてナッツを口にしようと手にするが…。

「冗談やなくて本気やで。」

「えっ…。」

真島さんは私の手にしたナッツを自分の口に運ぶ。私の手は掴まれたまま。今度は完全に視線は捕らわれた。

「どないな味がするんやろな。椿は。」

「…………。」

ナッツのない私の指をそっと舐めて笑う真島さん。あぁ、完全に茹蛸のような顔になっているだろう。身体が熱い。ぼんやりしながら聞こえた声。真島さんがお会計やと言っている。まだ私の手は掴まれたまま。もう逃げることは皆無。さて、次の行き先は?きっとそれは真島さんの胸の中になるのだろう。嬉しそうに歩く真島さんと赤い顔の私。今日の神室町はいつもよりも一段煌めいて見えた。


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