九十九さん×彼女
「九十九さん!今年は海に行きましょう!」
「これまた急ですなぁ。そんなに椿は泳ぎたいのですか?」
「違うよ!九十九さんと海で色々楽しいことをしたいから行きたいなぁって。」
「今日も椿は可愛いことを言ってくれますね。ヒヒヒ…。」
「そうでしょ!行こうよ、海!海でビールを飲んで水の中をぷかぷかしたり海の家でやきそば食べたい!」
「楽しい妄想ですな。」
「そうですよ。いつにしますか?」
手帳を取り出し九十九さんに予定を聞くが、九十九さんはいつものように笑顔で私を見たまま答えは返ってこない。
「知っていますか?海にはクラゲがいるんですぞ。」
「それくらい知ってるよ。刺されても大したことないでしょ。」
「おや、ご存じないのですか?カツオノエボシに刺されると死亡することもあるんですよ。」
「えっ…。」
信じられないという顔をすると九十九さんはPCの画面を見るように言ってくる。隣に並んで覗き込むと恐ろしい真実が。
「これでもまだ行きたいですか?海?」
「だって、こんなケース滅多にないでしょ。」
「滅多にないことですが、危険と承知で大切な恋人を海の中に入らせる訳にはいかないですぞ。」
「九十九さん…。」
私のことをこんなにも思ってくれているのか。一気に愛おしい気持ちがこみ上げてくる。その気持ちは態度に変わり、九十九さんを抱きしめる。そしてくちづけを交わす。海には行けないのは残念だけど、九十九さんの大切な気持ちを知ってまた好きになったある日の夏の出来事。
後日。
ヒヒヒ…うまくいきましたね。あのまま流れで海に行っていたらどうなることやら。可愛い椿の水着姿を他の輩に見せるなんて絶対に嫌ですからね。ヒヒヒ…さて、買ってくれていた水着は後日私だけの為に見せてもらうことにしましょうかね。
そんな思惑があったとは知らず、言われた通り九十九さんの前で水着を披露し、いつも通りいちゃつくのであった。
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