83.ギルドからの指名依頼

翌日、俺は朝から仲間達と一緒にギルドに来ていた。

ユスタから受け取った手紙には、要約するとスタンピードが起きたから仲間を連れて今日ギルドに来てくれと書いてあった。
受付に行くと、すでに話は通っていたのかギルド奥の部屋へと通された。

部屋はどうやら応接室のようで、机を挟んで向かい合うソファの片方にギルド長が座っていた。

「おお、来たか」

俺達は促されるとギルド長の対面に座った。
ギルド長は挨拶もそこそこに、本題を話し始めた。

「手紙にも書いた通り、お前たちに依頼を受けてもらいたい」
「あのスタンピードへの対応ってやつね」
「そうだ」
「態々俺達を呼び出さないでも受けられる奴はいっぱいいると思うけどね」
「C級以上のやつにはもう参加者を募集しているし、参加者はそれなりに集まってはいる。それでも今王都にはA級以上が不在なんだ。皆長期でダンジョンに潜っちまってる」
「ああ、それで」
「お前たちはD級だが戦闘能力はA級が保証されてる。今回の対応にお前たちは欠かせないんだ」
「他の街には?」
「スタンピードが最初の街に到達する前に間に合う場所にはいない。受けてくれるか?勿論報酬は納得のいく額を用意する」
「良いですよ。最初から断るつもりはありません」
「ありがとう。助かる」
「いえいえ」

俺達が了承すると。ギルド長は目に見えて安心したようだ。
そして俺たちに詳細を説明する。

今回スタンピードが発生したのは王都から見て北西のダンジョン。
新しく発生したダンジョンが長期間発見されずに放置されたせいでスタンピードの状態に移行したらしい。
周辺の魔物の分布が変化したことで調査した結果、ダンジョンを発見。
中は既に魔物で溢れ返っているため、スタンピードの発生自体は防げない状態だそうだ。

発生したスタンピードは、一番近い街であるアーネストに向かうと予想されている。
今回の依頼はそのアーネストでスタンピードを待ち受けて、魔物を狩りつくすことだ。
街自体は中規模で防壁もあるが、スタンピードの規模次第では防ぎきれない可能性もある。
アーネストが飲み込まれたら、いずれはその進行方向の先にあるこの王都まで被害に合うだろう。
その為、俺達も他人ごとではなさそうだ。

「アーネストに向かう馬車をギルドで用意する。今日の10時に出発だ」
「分かりました。間に合うように準備します」
「必要な消耗品はギルドからも支給するから、この後受け取ってくれ」
「ありがとうございます」

ギルド長からの説明が終わると、俺達は部屋から出てギルドのロビーに戻る。
そしてこれからのことを相談する。

「手分けして準備しよう」
「ギルドの支給品を受け取らないとな」
「エド君も連れて行くよな?伝えないと」
「ポーション類を買い足そう。特にマナポーションを。支給品だけでは足りないかもしれない」

俺達は分担して準備を進めた。


▽▽


10時になると、ギルド前にズラリと大量の馬車が整列して出発の準備をしている。
アーネストに向かう冒険者用の馬車だ。

俺達は受付で手続きを済ませて乗り込んだ。
エド君を同伴することに一悶着あったが、保護者がダグしかいない事を説明して何とか連れていくことを認めてもらった。
ギルド側では責任をとれないと念押しされたが。

混み合う馬車に揺られて数時間、俺たちはアーネストに到着した。
アーネストは王都ほどではないがかなり大きな町のようだ。
見上げるほどに大きな立派な外壁があり、周囲には広大な平野が広がっている。
スタンピードがなければ安全な町だっただろう。

アーネストの冒険者ギルドに着き、王都からの冒険者達はホールに集まった。
ギルドには鍛えているとわかる大柄で年嵩な男が待ち受けていた。

「俺は冒険者ギルドアーネスト支部の支部長をしている。ベリルだ。よく来てくれた」

ベリルと名乗ったその男は、王都からの冒険者を見回し頭を下げた。

「知っての通り、スタンピードを前にこの街は危機的状況にある。アーネストの冒険者だけでは対応しきれない程だ。君達が助けに来てくれて、本当に感謝している。休憩の時間もなく申し訳ないが、スタンピードの到来までもうそれほど時間がない。これから防衛戦の指揮を執る責任者からの説明を受けてくれ」

ベリルが下がると、入れ違いに一人の男が前に出た。
彼は王都からの冒険者達を呼び寄せると、格式張ばった礼をとった。

「王都から遥々お越しいただき感謝いたします。私はアーネストの騎士隊で隊長の任を預かっております。クラウスと申します。」

クラウスは騎士服に金属の鎧を身に着けた、如何にも騎士といった格好をしていた。
態度や言葉遣いから、生真面目で要領の悪そうな印象を受ける。
隊長をしている割には若そうで、30歳前後ではないだろうか。
眉間に寄せた皺が目立つ、キリリとした男前だった。

「皆さんにはこの後の防衛戦において、私の指揮下に入ってもらいます。勿論冒険者である皆さんを軍隊と同じように指揮するつもりはありません。パーティ単位でまとまって行動できるように配慮もします」

クラウスは更に説明を続けた。
防衛戦は騎士が中心になって行い、冒険者はそのサポートに回るようだ。
魔物の集団に対して騎士隊が中央から魔物にぶつかり、冒険者は両翼に配置する。
冒険者を危険な位置に置いたり、使い捨てにするつもりは無いようで、
自分たちが最も危険な役回りをしようとしているのには好感が持てた。

スタンピードの到着予定は今から2時間後。
それまでに街の外に移動し、隊列を整える。
クラウスの部下と思われる騎士たちが冒険者たちを案内し始めた。

「失礼。あなたがミノー殿だろうか?」

俺達も、騎士の案内し従って移動しようとしたときに、クラウスに呼び止められた。

「そうですよ」
「突然申し訳ない。王都のギルドからの情報で、貴殿達が最も強いパーティだと聞いている」
「ああ、そうらしいですね」
「これからの戦いでは何が出てくるか分からない。私たちも戦闘の専門ではあるが、高位の魔物が出てきた場合は対処しきれる保証はない。恐らく貴殿達の力を借りることになるだろう。その時は宜しくお願いしたい」
「いいですよ。俺たちができることなら協力しましょう」
「ありがとうございます。そう言っていただけると助かります」

そういってクラウスと別れると、俺達も町の外の防衛線に加わった。


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