79.ランクアップと二つ名

王都の祭りからさらに数か月後。

「全員のDランク昇格を祝して」
「「乾杯!」」

夜の酒場で、俺達は飲み物の入ったジョッキを打ち合わせる。
俺とエド君だけアルコールの入っていない果実水だけど。

「いやぁ、やっと全員がDランクになったな」
「やっとって言ってもかなり早い方だぞ」
「普通なら何年もかけて実績を稼ぐものだからな」
「そうなんだ」

じゃあ1年もしないうちにDランクになった俺達って滅茶苦茶早いんじゃないか。

「パーティを組むのはCランクになったあたりで良いかな?」
「それくらいでいいんじゃないか」
「Cランクからはソロじゃ厳しい依頼も増えてくるだろうからな」
「普通はEランクでもパーティ組むんだが」
「パーティ組んだらパーティ名とかも決めないとな」
「そうだな、何か考えはあるのか?」

パーティ名か、難しいな。
俺そんなにセンスある方じゃないし。
何かテーマが必要かなぁ。

「う〜ん。エド君入れて丁度7人だし。七つの大罪とか」
「なんだそれ?」
「人を罪に導く7つの特性とかだったかな。傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、色欲、暴食、怠惰の七つ。」
「そんなのがあるのか」
「メンバーがそれぞれの罪を象徴してたりしたら格好いいよな。リーダーはやっぱり傲慢とか?」
「お前、その中だったら色欲以外になんかあんの?」
「・・・・まあ、他のも合うメンバー居ないし却下だな」
「急いで決めることもないだろ。ゆっくり考えればいい」
「そうだな」

いろいろ話しながら飲み食いして、俺とエド君以外は少し酔いも回ってきている。
そこでリックが思い出したように

「そういえば、なんか俺たちに二つ名がついているらしいぞ」
「二つ名?それってもっとベテランで実績を残した冒険者に着けられるものじゃないのか?」
「普通はそうなんだけど」

事情を聴いてみると、どうやら俺たちはギルドでも目立っているらしい。
Eランクまではそれほど目立っていなかったはずなんだが。
同時に登録した6人全員がEランク依頼をソロで平然と達成しているのを見て、「あいつら普通じゃなくね?」となっているらしい。
特に俺以外のメンバーは度々討伐依頼も受けているから、戦っている所を目撃されたりもしているらしい。
その結果が、いつの間にかつけられていた二つ名だと。

「どんな二つ名がついているんだ?」
「俺は”魔弾”だそうだ」
「格好いいじゃん。魔術付与の矢を撃つリックにぴったりだな」
「グレンは”剛剣”」
「大剣で岩まで両断できるグレンらしい呼び名だな」
「アドルバートは”不動”」
「一歩も引かずに敵の攻撃を受け切るところが表されているな」
「ダグラスは”破鎚”」
「ギルド試験では地面を砕いていたからな」
「レイヴンは”瞬影”」
「素早いレイっぽいな。僅かに残る影しか捕えられない感が」
「皆結構似合う二つ名を付けられてるよな」
「そうだな」

意外とちゃんと合う呼び名を付けているし。
格好良いしな。
ところで

「俺は?」
「え?」
「俺は何か無いの?」
「ミノーは・・・」
「あるんだ」
「・・・・”調教師”」
「は?」
「”調教師”」
「なんでだよ!」
「まあ、二つ名というほど定着しているわけじゃない。一部で言われているだけだ」

おかしいだろ、俺だけ。
皆は戦闘能力関係でピッタリの格好いい呼び名を付けられているのに。
俺だけジャンルが違うじゃん。

「余程衝撃的だったんだろ、バルドとかユスタの態度の変化が」
「あいつらか・・・」
「まあ、意外と本質をついてはいるから」
「そこは否定しないが」
「ミノーは討伐依頼を受けないし、戦っている所も見られていないんだろ」
「けどなぁ」
「そのうち戦闘依頼関係の実績詰めば変わるかもしれないから」
「そう願うしかないか」

あまり知りたくなかった事実を知ってしまった。
それからも、いろいろ楽しく話して夜は更けていった。



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