58.ギルドを訪問したら絡まれた

今日は調査2日目だ。
みんな昨日と同じ場所に向かうらしい。
俺はいく場所はもう決めてある。

「俺は冒険者ギルドに行こうっと」
「あ、じゃあ僕今日はミノーお兄さんについていきます」
「エド君、ダグと一緒じゃなくていいの?」
「はい、初めての街でミノーお兄さん1人じゃ大変だろうから」
「ありがとう、助かるよ」
「はい!」

俺とエド君は、グレンに場所を教えてもらった冒険者ギルドに来た。

「おー、ここが冒険者ギルドか」

なかなか大きな建物だ。
中に入ると正面にカウンター、右手に掲示板、左手に酒場が併設されていた。
今は空いている時間なのか、カウンターにはちらほら人がいるだけだ。
俺は空いているカウンターに向かい、受付の人に話しかけた。

「すいませんお姉さん、ちょっといいですか?」
「はい、ご依頼ですか?」
俺は受付のお姉さんに話しかける。
多分俺の肉体年齢よりもちょっと年上くらいの可愛い子だ。
「いえ、近々ここで冒険者登録をしたいと思っているんですが必要なものとか色々教えていただけませんか?」
「ええ、構いませんよ。冒険者登録は当カウンターで承っています。必要なものは登録用紙と登録料の大銅貨5枚があればできます。登録用紙はここのカウンターで受け取ってください。これが登録用紙です。」

用紙を見ると、名前や出身地、得意武器や魔術的性など書く欄があった。

「これ全部記入しないといけないんですか?」
「いえ、必須なのは名前だけですね。ギルドでパーティの斡旋も行うことがありますので、その人が何ができるのか知るために記入をお願いしています。」
「そうなんですか」
「あと、試験は毎週水の日に行っています」
水の日というのは地球で言うところの水曜日のことだ。
わかりやすい。
「登録とは別に試験があるんですか?」
「はい、試験は戦闘試験と筆記試験があります。そこで戦闘技術や冒険者として必要な知識を示していただくとランクアップが早まります。ランクはFからSまであります。目安としてはFで駆け出し、Eで一般、Dで中堅、Cでベテラン、Bで一流、Aで英雄、Sで伝説と言われてます。」
「上のランクからスタートでとかではないんですね。」
「戦闘能力と知識は依頼遂行に必要な能力とは別ですからね、ランクアップは依頼達成能力を実績でもって判断しています。ただし、試験で上のランク相当の戦闘能力があると判断された場合は、戦闘に関する実績を省略してランクアップができるのですよ」
「なるほど、ちなみに、依頼達成に必要な能力っていうのは例えばどんな能力ですか?」
「そうですね、例えば、薬草の見分け方、薬効を損ねない採取の仕方、護衛の仕方、価値を落とさない魔物素材の剥ぎ方なんてのもあります」
「色々ありますね」
「はい、その冒険者の依頼達成状況から、総合的に見て上のランクにふさわしいと判断した場合、ランクアップのお話をさせて戴きます。」
「なるほど、勉強になりましたありがとうございます」
「いいえ、登録をお待ちしています」
「あ、あと聞きたいことがあるんですが、登録に年齢制限ってあります?」
「はい登録は12歳からとなっています」

12歳か、じゃあエド君は無理だな。

「ありがとうございます今日はこれで失礼します」

エド君を連れて帰ろうとすると、1人の男が立ちはだかった。
先程まで酒場にいた男だ。

「おいおい子連れで冒険者か?遊びじゃねえんだぞ」
「この子は今日だけの付き添いなので。仕事には連れて行きませんよ」
「これから登録するんだってな。なんなら先輩が色々教えてやろうか?もちろん授業料はもらうがなぁ」

男はニヤリと笑みを浮かべている。

「これ、俺絡まれてる?」
「多分そうだと思います」

男をよそにエドくんに耳打ちすると、肯定された。
ギルドで絡まれるのは異世界転移もののテンプレだなあ。
まだ登録前だけど。

改めて目も前の男を観察する。
一言で言い表すならチンピラって感じだろうか。
冒険者しているだけあって、服の上からでもムキムキなのが分かる程のいい体をしている。
昼間から酒飲んでる男だし、中身はろくな奴じゃなさそうだな。
逆立った金髪がよりチンピラっぽさを増している。
鋭い目の厳つい顔だけど、嫌いじゃないな。

「大丈夫ですよ。俺、結構強いんで」
「はは、見栄張るなって。いいから来いよ」

男が俺の腕を掴もうとした為、一歩引いて避けた。

「なんなら先輩より強いと思いますよ」

俺は挑発するように笑顔で告げた。

「ああ?テメェなめてんのか」
「なんだったら、勝負します?」
「上等だ。ボコボコにして礼儀ってものを教えてやる」
「ただ勝負するだけじゃつまらないんで、何か賭けませんか?」
「良いだろう。何を賭ける?」
「負けた方は勝った方が指定したものを、命以外何でも一つ差し出す。と言うのは如何ですか?」
「乗った、財布出させて有り金巻き上げてやる」

俺の有り金って今すごい金額なんだけどな、と金貨が詰まった財布を思い出す。
まあ、負けないから問題ないけど。

「ちょっとバルドさん。その子は冒険者でもない一般人ですよ!揉め事は処罰の対象です!」

俺と男が戦う流れになったので、受付のお姉さんが慌てて止めてきた。
どうやらこの男はバルドと言う名前らしい。

「大丈夫ですよお姉さん。今の賭けの証人になってもらっていいいですか?あと開始の合図をお願いします。」
「大丈夫って、その人は素行は問題あるけど若くしてCランクになった凄腕よ。やめた方が良いわ」
「俺も強いですから」

お姉さんは俺を心配して必死に止めようとするが、俺が頑として聞かない様子を見せると諦めてくれた。

「そう、どうしてもやめないのね。バルドさん!大怪我を負わせることがない様にお願いしますよ!」
「こんな素人じゃ一発だろ。怪我をさせる暇もねえよ」
「仕方ないですね。行きますよ」

お姉さんが手を振りかぶる。

「始め!」

お姉さんが手を振り下ろすと同時にバルドが動いた。

「おらぁ!」

バルドの狙いは鳩尾、素早い動きで俺に肉薄し拳を放って来た。
その動きの速さから、この男が強いと言うのは本当なのだろうと思った。
まあ、俺達ほどじゃないが。

「おっと」
「なっ」

俺は体を半身にしてずらすことで、バルドの拳を紙一重で避けた。
振り抜いた拳が空ぶったことで、バルドがたたらを踏む。

「手加減してくれたのか?簡単に避けられたぞ。」

とりあえず挑発しておく。
今後のことを考えたら本気を出させた上で勝った方が都合がいい。

「テメェ。そんなにお望みなら本気で相手してやらぁ!」

今度は顔面狙いか。
先程の一発よりもさらに早いパンチだ。
俺は顔を反らせる様にして、またギリギリで避ける。

「く、この」

バルドは胸に、腹に、顔にと次々と拳を放ってくるが、俺も右へ半歩、左へ一歩、仰け反って、と全て避けていく。
足払いを跳躍して避け、ハイキックをくぐり抜ける。

「はぁ・・はぁ・・テメェ。何で攻撃してこねぇ!」
「俺から攻撃したらすぐ終わっちゃうからな」
「舐めやがって!」

遂にバルドが腰の剣を抜いた。
それは反則だろ。

「死ね!」

バルドが剣を振り下ろして来た。
お姉さんの悲鳴が響いた。

そろそろ反撃するか。
俺は振り下ろされる剣の腹を掌でトンと押して軌道を逸らした。
俺の横を通り抜け、そのまま床に剣先が刺さる。
バルドが目を見開くのが見える。

「よっ」
「ーーがっ!」

俺の突き上げた拳がバルドの顎を正確に捉える。
バルドはそのまま後ろに吹き飛ぶように仰向けに倒れると、目を閉じて動かなくなった。
どうやら脳震盪で気を失った模様。

俺はとりあえずお姉さんの元に向かった。
お姉さんはポカンと口を開けて呆気に取られている。

「お姉さん、ちょっといいですか」
「え?・・・はっ、はい、何でしょうか」
「あのバルドって男について聞きたいんだけど・・・・」

そしてお姉さんから、バルドについて一通り知っている情報を聞き出した。
どうやらこのバルドという男、腕は良いがなかなか困った奴らしい。
自分勝手な振る舞いにパーティメンバーも困っているが、実力があるため辞めさせられないそうだ。
まあ、冒険者になってもいない一般人に絡む時点でヤバいやつだけど。

「じゃあ、賭けの通り、あいつ貰っていきますね」
「え?勝負に負けたら何でも差し出すって、あれ?」
「はい、体を差し出してもらいます」
「まあ、そういう・・・・」
「1週間くらいで返すので。パーティメンバーもに伝言をお願いします」
「わかりました。バルドさんにはいい薬になるかもしれませんね」

俺はバルドを宿に連れて行った。
バルドは酒臭くなっていたし、一見酔った人を介抱しているようにしか見えないので、道中誰にも止められなかった。

宿に着くと、大部屋に一人増えることを伝え追加分の料金を払った。
部屋には入らないように伝えるのも忘れない。
さて、1週間楽しませてもらおうかな。


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