4.一人目の犠牲者1 (駆け出し冒険者編ー睡姦)
俺がこのダンジョンに潜るようになったのはあるうわさを聞いたからだ。
稀にモンスターが金(きん)の欠片をドロップする。
俺のようなその日の飯代と宿代を稼ぐので精一杯な駆け出しの冒険者にとって、
その話はあまりに魅力的だった。
低階層でゴブリンを倒しているだけで、運が良ければ一か月は
食うに困らない金額が手に入るのだから。
こんな条件に飛びつかないはずはなかった。
▽▽
探索中に現れたゴブリンに剣を振り下ろす。
ゴブリンは悲鳴を上げたが、浅かったようで棍棒で反撃をされた。
左手の盾で防ぎながら、今度は確実に仕留めるために首を狙って薙ぎ払った。
紫色の血を吹き出しながらゴブリンは絶命した。
後にはゴブリンの魔石が残った。
「まだ出ないか〜」
金(きん)が落ちることを期待してゴブリンを狩っているが、まだ一度も出ていない。
ゴブリンくらいなら俺みたいな駆け出しでも一人で狩れるから助かっている。
しかしこんなに落ちないとなると
もっと下の層まで進むことも考えないといけないだろうか。
下に行くほど金(きん)も落ちやすくなるらしいし。
溜息を吐きながら探索を続けていると、
それを見つけた。
「あれは!」
宝箱だ!
扉のない小部屋状の場所で宝箱を見つけた。
早まる鼓動を感じながら宝箱に近づいていく。
罠に注意しながら震える手で開くと中には盾が入っていた。
「これは、スケイルリザードの鱗の盾…」
大当たりだ!
一か月どころじゃない。1年は暮らせる!
勝手に浮かぶ笑みを止めることができなかった。
今日の探索は終わりだ。
持って帰って早く売ってしまおう。
見つけた盾を手に取り立ち上がる。
その直後、俺の背に衝撃が走った。
「随分良い物を見つけたじゃないか。悪いが俺に譲ってくれないか」
背後から嗤いを含んだ声が聞こえた。
下を向く、俺の腹からは剣の先が生えていた。
信じられない。どこかそんな感情を抱えて何とか頭だけで振り返ると、
そこにはニヤニヤとした表情の男が立っていた。
男が持つ剣は俺の背中に吸い込まれていた。
「あ・・・」
声を漏らす俺にかまわず男は剣を引き抜いた。
鮮血が噴き出す。
俺は何も出来ずに崩れ落ち、すぐに意識が闇に落ちた。
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