2.転生した
次に意識を取り戻したとき俺は真っ暗な空間にいた。
何も見えないな。
最後に不吉な会話をしていたから、早く自分について知りたいんだが。
手探りで周囲を探ろうとしても体が動かない。
転生ってことなら生まれたばかりかと思っていたが、違うのか？
まさかまだ母体の中とか？
しばらく考えたが、自分を鑑定すればいいことを思いつく。
よし、【鑑定】
心の中で唱えるとどうやら発動したらしい。
頭の中に情報の羅列が浮かんだ。
名前：美能秀和
種族：ダンジョンコア
年齢：0
性別：不明
レベル：1
スキル：
【鑑定LV.--】
【迷宮創造 LV.--】
称号：異世界人
お、名前はそのまんまなんだ、とか思ってたら、
次の行を見て硬直した。
「種族：ダンジョンコア」
人間じゃなさそうだなとは薄々は思っていたけど。
魔物と言っていいかさえ分からない不思議な物体に転生してしまった。
神様が自我がどうとか言ってたのはこれか。
普通ならダンジョンコアに人間の知能とか自我はないよな。
範囲は限定されるけどなんでもできるって、
自分の迷宮内なら思い通りですよってことかよ。
神様に悪意は微塵もないんだろうけど。
俺の無茶ぶりの結果なんだろうけど。
やってしまった。
どうしよ。
欲張りすぎたのがいけなかったのか？
チートスペックでハーレムを夢見たせいか？
まさかこんなことになるなんて思わないじゃないか。
そのまま一時間もわが身の境遇を嘆いたり、
今後どうしようと悩んでみたりしたけど、
最後は開き直った。
よし、もうこうなったら最高のダンジョン（俺にとって）を作ろう！
覚悟も決めたら、行動あるのみだ。
まず今後の方針を決めなくては。
ダンジョンとは何なのかを知るために鑑定さんとお話をした。
鑑定は物の解析だけでなく辞書のような使い方もできるらしい。
実物がなくても情報を得ることができる。
鑑定さん曰く、ダンジョンに対する一般的な認識がこれだ。
ダンジョン
世界各地に存在する迷宮。その多くが謎に包まれている。
内部は階層で別れた造りとなっていて、多いもので数百層から成る。
構造は様々で洞窟型が一般的であるが、森、砂漠、海が中に広がる場合もある。
侵入者を迎撃する罠が存在する。
壁などの構造物は破壊できない。内部構造が変化することがある。
内部に魔物が徘徊していて、深い階層ほど強い魔物が出現する。
特定階層に階層ボス、ダンジョンボスと呼ばれる強力な魔物か存在する場合がある。
魔物は討伐された際に死体は消えるが、何らかの物品を残す。
稀に高価な品が入った宝箱が置かれている。
魔物の落とす品や宝箱を目当てに内部を探索する人間も多くいる。
ダンジョンには侵入する者に何らかのルールを強いるものもある。
長期間内部の魔物が倒されないと、魔物を外に大量に放出する。
これはスタンピードと呼ばれ、周辺に多大な被害を齎す。
核を破壊すると魔物の出現は止まる。
うん、俺の思ってたダンジョンだ。小説とかによくあるやつだ。
ダンジョンがなんで出来るかは、知られていないらしい。
さらにダンジョンについて知りたいと考えていると、
鑑定さんではない別の何かが自分に語りかけてきた。
これはたぶんダンジョンコアとしての本能のようなものだと思う。
考えてみればダンジョンコアって普通は自我を持たないんだから、
自分が何をすべきかが生まれつきわかるようになっているんだろう。
それのおかげでもっと詳しいことが分かった。
ダンジョンというのは一種の魔物だ。
魔力を吸収して成長していく。
世界に満ちている魔力を吸収するし、中に誘い込んだ人間が放出している魔力も食えるらしい。
人間が使った魔術を構成する魔力は最後は空間に溶けるから、
それを食うこともできる。
わざわざ、魔物を餌にして中で戦わせるのはそのためだ。
また、中で人間が死んだ場合保有していた魔力のすべてが食える。
だから罠やボスで死にやすい条件を作るんだ。
人間が入ってくれないと食える魔力が少ないから、
放置されたダンジョンはスタンピードを起こすんだろう。
人間が入らざるを得ないように。
倒された魔物が消えるのはダンジョンが吸収して魔力に還元するためだ。
餌のためにドロップ品だけ残し、
次に魔物を作るために魔力のリサイクルをしている。
ダンジョンの中というのはある種の異界とも言える空間のようだ。
ダンジョンコアが管理する世界だから、破壊できないし、
構造を変えられるし、冒険者に何らかのルールを強いることができる。
ダンジョン内に限り神のごとく何でもできる。
確かに俺の希望通りかもしれないな。
結局俺のやることはほかのダンジョンと変わらないかもしれない。
冒険者をたくさんおびき寄せるダンジョン経営だ。
で、前世ではできなかったエロいことしたい。
ダンジョンコアの力を使えばどんなことも思いのままだ。
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