39.一人目の犠牲者2-3

「実験に付き合ってくれないか」

またも、突然の申し出だった。

「なんのだよ」
「監視用スライム。外に出たときに俺から離れても、奴隷たちの監視が出来るようにするためのものだ」

ミノーが言うには、特殊なスライムを俺に寄生させて監視するらしい。
寄生というのは尻の穴から入れて、体内に住むということだ。

こうすることで俺の健康状態から、周囲の状況、会話の内容までわかるようだ。
また、体内から魔術を発動できるため、危険な時には俺を守る事も出来ると言われた。
さらに、外に出ても、今の様に排便も必要なくなるらしい。

「体ん中にそんなもん入れて大丈夫なのかよ」
「大丈夫だよ。俺の望みを感じ取って動くようになっているから。危害は加えない」
「余計心配だよ。ぜってー嫌だ」

そんな得体のしれないもん入れたくないわ。
実験ってことは誰にも試したことないってことだろ。

「どうしても?」
「い・や・だ」
「ふぅ、力ずくで入れるしかないか」
「な、やんのかこら」

色んな意味で身の危険を感じて、思わず拳を構える。
ミノーは俺から両手を隠すように、自分の背中でごそごそ何かをやっていた。

「お?・・・・ああああぁぁぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

突然、下腹部から目のくらむような快感が発生し、体が支配された。
脚が勝手に痙攣し、ガクリと膝をつく。


何か縋り付くものが欲しくて、床に敷かれていた豪華な絨毯の毛を握りしめた。

この感覚は何度も覚えがある。
ミノーが契約魔術を使ったのだろう。
あいつの左手に今俺の性の弱点である前立腺が召喚されている。

いつもは前立腺をつついたり、揉んだりするところから始めていたが、今回はいきなりギュッと握りしめられたようだ。
自然とハッ、ハッ、と言う、引き攣るような呼吸になってしまう。

この時点で、力ずくで来られたら抵抗できなかっただろうが、面白くなったのだろう。
そのまま前立腺の責めを続けられた。

「あっ、いやああぁぁあああ!!!・・・っやめてえぇぇえぇええええ!!!」

ミノーが左手を握る度に、頭の中を真っ白な光が走る。
ミノーを止めなくてはいけないのに、体が自由に動かない。
座っていた状態から、前のめりに倒れた。

「お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛お゛お゛!!!いっでる!!ずっどいっでるぅ!!」

ミノーが左手を握る。イク。握る。イク
自分が白目を剥いているのが分かる。
脚がバタバタと床を蹴り、手がガリガリと絨毯を引っ掻く。
股間がぐっしょりと湿っているのを感じる。

「ア゛ッッ・・・・ッッーーーーー・・・・ッッあ゛・・・・・」

自分の口から出ている言葉も分からなくなってきた。
さっきまで、何を考えっていたんだっけ。
もう何も思考することが出来ない。

俺の頭は限界を迎え、プツンと意識が途切れた。


▽▽


次に目を開けたとき、上機嫌なミノーが目に入った。
状況を察した俺の機嫌は下降した。

「スライム入れといたから」

俺の意思を無視した蛮行にふざけるなと思うが、思ったよりも違和感がないことに気付いた。

「これ本当に入ってるのか?」
「違和感ない?」
「全然」
「良かった」
「全然良くない」

全く納得していないが、これ以上何を言ったところでミノーの意思は変えられないだろう。
俺は全てを諦めた。

せめて入っているか分からない程、違和感がないことが救いか。


▽▽


最初の違和感は食事中だった。

「やっぱさあ、今のルールだとリック側に有利過ぎない?もうちょっとリックの負担を増やした方が、訓練になると思うんだけど」
「たとえば?」
「俺も魔術を打って妨害できるとかさ」
「避けながら、撃てってか?あんまり、範囲広い攻撃されると絶対避けられないぞ」
「そこは初級の単発のみとかにしてさ」
「矢を打ち落とす事も出来るだろ。それなら、詠唱省略なしとかにしっ!・・ぁ、くぅ・・・・・」

ミノーと修業の方式について議論している最中、突然下半身に甘い感覚が走った。
それはいつもの様に尻を弄られているとき程の決定的な刺激ではなかったが、ゆるゆるとした快感は僅かずつ俺の思考を溶かした。

おそらくミノーが何かをしているんだろう。
契約魔術を使っているのかもしれない。

こんな風に食事中に誘われたことは初めてだ。
食べているものは勿体無いが、折角の誘いだ。

「どうした?急に黙って」
「え?」

ミノーに応えようと熱っぽい視線を向けるも、ミノーに流されてしまった。

「いや、詠唱省略は無しにして、連発できないようにしないと。全部撃ち落されたら当てようがない」
「それはそうかもな。じゃあ、詠唱有りの単発の初級魔術のみ、妨害として使用可にするか」

自分から誘ってきたくせに、と多少憤りを覚えつつも会話を続けた。
そうしているうちに、感じていた違和感は消え去っていた。


その違和感は、時折思い出したかのように突然襲い、俺を苛むようになっていった。
そして、現れるたびに段々と強い刺激となってきた。

違和感が来るたびにミノーを伺うも、知らぬ振りをされた。
あいつが何をしたいのかが分からない。


▽▽


俺の周りを円を描くように走るミノー。
ミノーの移動を予測して、次々と矢を放つ。

ミノーも慣れてきたのか、矢を放つのを見たら速度を変えて避けるのが上手くなってきた。
俺は矢の速度や軌道にも変化を持たせ、ミノーの目測を誤らせることを狙う。

弱い矢をやや山なりに放つ、強い矢を直線的な軌道で放つ。
速度の変化を見越して、態とミノーの移動予想位置よりも前に射る。

お互いに相手の行動を予測しての駆け引きが続けられる。

「水の弾丸よ敵を打て。ウォーターショット」

俺の放った山なりの矢がミノーに当たろうかという時、向こうから放たれた魔術によって打ち落とされてしまった。

ミノーからの魔術の使用が追加され、俺の方の難易度が大きく上がった。
距離が近づいた後も、避ける以外の選択肢が追加されたことで、最終的に触れられて負けてしまう回も出てきた。

またミノーが水の魔術を放ってきた。
今度は俺を直接狙い、妨害を図っている。

撃ち落すか、避けるか選択を迫られる。
矢より速度が遅い魔術だ。
撃ち落すのはやや難易度が高いが、距離があれば避けるのはそれほど難しくない。

俺は右に一歩移動して避けようとした。

「・・・うっ・・・ぁあんっ・・・」

突然の快感が俺を襲い、足を踏み出すをの躊躇ってしまった。
魔術はそのまま俺に向かってくる。

「・・ぐっ!・・」
「リック!」

水弾は俺の肩に直撃した。
威力は弱めに調節されていたのだろう。
それほど強い痛みは受けなかったが、俺は尻もちをついた。
今まで訓練中に違和感が現れることはなかった。
立ち上がらなくてはいけないに、下腹部の違和感は強くなり邪魔をする。

「大丈夫か!」

俺の様子がおかしいのに気付いたのだろう。
ミノーが走って近づいてきた。

「だ、だいじょ・・・あぁぁああんっ!・・」
「どうした!」

気合を入れて何とか立ち上がろうとした俺を、強い刺激が襲う。
今度はまるで、尻に指を入れて、かき回されているかのようだ。

「こ、これ・・止めてぇ・・・」
「は?何がだ?俺何もしてないぞ・・・」
「え?」

ずっと犯人だと思っていた男から、否定の言葉が放たれた。




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