24.二人目の犠牲者2-3
それから男に色々説明してやった。
俺がダンジョンの管理者である事。
男が既に一度死んでいる事。
それを俺が拾い上げて奴隷にした事。
もうここからは出られない事。
壁尻からのゴブリンによる輪姦も俺の差し金だと正直に話した。
その上で戦い方や魔術を教えて欲しいと頼んだ。
「引き受けてくれるなら、別の部屋に行って普通の暮らしが出来る。生活の面倒もこちらで見よう」
「もし引き受けなかった場合は?」
「特に何もないよ。このままというだけ」
「分かった。引き受けよう。ここから出られるなら何でもするといったのは俺だ。出来るだけのことをしよう」
正直選択肢など無かったようなものだが、男は二つ返事で受けてくれた。
しかも、態度を見る限りちゃんと教えてくれそうだ。
こんな環境を作った相手に。真面目な奴なんだな。
「あ、そうだ」
礼を伝えつつ壁から出そうとしたとき、ある事を思い出した。
こいつに言っておかなきゃいけない事が有ったんだった。
「あんたの仲間達、全員無事にダンジョンを出て行ったぞ」
男は一瞬何のことか分からなかったようだが、
俺の言葉の意味が分かると俯いて涙ぐんだ。
「・・そうか・・・・・そうか・」
こんな目にあっていたのに仲間も心配だったようだ。
男が死んだときパーティメンバー達も消耗していたからな。
少し待っていると。
落ち着いて男が話しかけてきた。
「そういえば、自己紹介がまだだったな。俺はグレン、君は?」
名前か、なんて名乗ろうかな。
まあ本名でいいか。
姓の美能ならあんまり違和感なさそう。
「美能」
「ミノーかよろしく頼む」
今後別の奴に名乗るときも、これが名前って事にするか。
▽▽
広い空間の中、木と木がぶつかる鈍い音が響く。
「また腕だけで振っているぞ」
「うおっ、ってぇ!」
木剣で幾度となく打ち合う中、
俺が振り下ろした剣が弾かれ、がら空きになった胴に一撃入れられた。
「腕だけで振るから簡単に弾かれる。綺麗な型になんて拘る必要はないが、剣に力を乗せる体の使い方を覚えろ」
「はいっ」
俺は男、改めグレンに剣の指導を受けている。
グレン曰く俺は相手の攻撃に対する勘は鍛えられているが、
体の使い方がなっていないらしい。
剣への力の乗せ方、攻撃の受け流し方なんかを体に覚えこませるため、
基礎から学んでいる。
それはもう厳しく。
グレンの本来の武器は大剣だけど、俺に合わせて木の長剣で打ち合いをしている。
同じくらいのスペックで体を作っているのに、俺はまるで歯が立たない。
相手は慣れていない武器の筈なのに。
「どうした、正面から受け止めるだけでは反撃できないぞ。」
「ぐっ」
「受け流すか、避けるかして隙を作れ。」
正直キツイ。
攻撃しては受け流されるか、弾かれる。
向こうが攻撃してきたら、何とか受け止めるのに精いっぱいで、
綺麗に受け流すなんてできないし反撃なんてとてもする余裕がない。
こんなに強かったんだな。
もちろん俺がコアに溜め込んでいる魔力を使って力任せに戦えば勝てるだろうが、
器を同じにした時の強さではまるで比較にならなかった。
圧倒的な強さで剣を振るう美丈夫。
グレンは言葉で言い表せない程に格好良く見えた。
▽▽
稽古が終われば居住部屋に戻る。
ちょっと豪華な洋風の部屋で居間と寝室が分かれてる。
暇をつぶせるように俺が前世で読んだ事がある本や、
ボードゲームなんかも作ってある。
休みの時はグレンと一緒によく読んだり遊んだりしている。
食事は俺が能力で作ったものを食べている。
この世界の食事を知らないから地球の料理になるけど、おいしそうに食べてくれているから大丈夫だろう。
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