19.五人目の犠牲者1 (クズ冒険者編ー妊娠出産)
このダンジョンは俺にとって良い狩場だ。
徘徊している魔物だけでなく、冒険者もいいカモだ。
今までは街道で護衛もつけられないような
貧乏行商人を狙うこともあったが、
ここに比べると割に合わないからもうやっていない。
なんせここなら低層しか潜れないような雑魚でも、
大金を持っている場合があるからな。
そういうタイミングを狙って狩れば楽に稼げる。
しかもダンジョン内なら目撃者も出ないし、
時間が経てば証拠も消える。
この間狩った冒険者は旨かったな。
宝箱のアイテムを持っているなんてな。
あの盾は良い金になった。
おかげでしばらく遊んで暮らせたぜ。
毎日酒飲んで、博打に興じて、色町で女を買って。
楽しく過ごさせてもらったよ。
派手に遊びすぎて金も少なくなってきたから、
またこうして稼ぎに来なきゃならなくなったが。
今はダンジョンでオーク相手に狩りをしている。
こいつらは力は強いが、頭は悪いし動きも遅い。
スピードで翻弄して急所を突いてやればいい。
▽
暫く狩っていると妙に強いオークが出てきた。
相変わらず俺を捉えることは出来ないが、
こっちの攻撃もなかなか通らない。
急所狙いの攻撃はすべて防がれる。
まさか特殊個体か。
このダンジョンには稀に特殊個体と呼ばれる強い個体が現れる。
身体能力なんかの基本スペックは通常個体と変わらないが、
知能が高く、戦闘の技量が高い。
今日は運がいい。
特殊個体は強い代わりに、ドロップ品はかなり良いものが出る。
どうせ相手の攻撃はこっちには当たらないんだ。
俺ならこいつ相手でも負けることはないだろう。
オークが俺に向かって剣を振ってきた。
その攻撃を俺は余裕で避ける。
更にその隙をついてこっちが攻撃した。
その時死角になっている側面から強い衝撃を受け、
俺は吹き飛ばされた。
「ぐあっ」
吹き飛ばされる時に一瞬見えた。
俺にぶつかってきたのは岩の塊だった。
「まさか・・魔術・・」
俺の攻撃に合わせて地属性の魔術でカウンターをしてきたのか。
特殊個体だからって、オークが魔術を使うなんて聞いたことがないぞ。
こいつはヤバい。
魔術を使われたら、俺でも勝てない。
仕方ない、ドロップは惜しいが特殊個体は諦めて逃げよう。
背を向けて駆けだそうとする。
その時、胸に鋭い痛みを感じた。
「・・・あ・・」
俺はオークの剣に貫かれていた。
いつの間に距離を詰められたのか。
剣が抜かれ血が噴き出した。
俺は崩れ落ちる。
そのあとすぐに俺は意識を失った。
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