8.二人目の犠牲者2

目を覚ましたら、洞窟のような空間にいた。
このダンジョンの低階層に似ている。

オレは確かに死んだはずだ。確かに覚えている。
なぜ生きてこんな所に居るのだろうか。

「・・・なんだこれは?」

起き上がろうとして気づいた。
地面にうつぶせになっていると思ったが、腰から下が壁に埋まっていた。
多少身動きできることから、下半身は隣の部屋に出ているようだ。
隣はこの部屋よりも低い位置に床があるらしく、下半身は立っている状態に近い。
しかし、足は地面に埋まっているのだろうか、何かに挟まっているように動かない。
何とか抜け出そうともがいても、壁は腰にぴったりと密着していて、
前にも後ろにも抜けることができない。

「ロックブレイク!」

魔術で壁を壊そうと試みるが、魔術が発動しなかった。
しかも、僅かずつだが魔力が吸われているような感覚がある。
魔術が使えないため、殴ってみる。
オレのステータスなら、普通の石壁くらいなら素手で砕けるが、
この壁はびくともしなかった。
殴った為傷ついた拳が、回復魔術をかけられたように治っていった。
一体何なんだこの場所は。

暫く、壁から抜けられないか試していると、
隣の部屋にある脚が何かに触れられている感触がした。
なんだろうか?
人間だったら助けてもらえるかもしれない。
そんな期待を持ったが、次に聞こえたものに打ち砕かれた。

「ギィーーー」

「なっ!」

今の鳴き声は、ゴブリンだ。
こんな身動きの取れない状態で魔物に出会ってしまうとは。

ゴブリンは通常なら取るに足らない魔物だ。
子供ほどの身長に貧弱な力。
一対一ならそこらの村人でも勝てる。
オレなら素手だろうと一発で殴り殺せるだろう。
ゴブリン持つ武器は棍棒ぐらいのものだ。
オレの防御力ならゴブリン如きにいくら殴られようと痛くも痒くもない。
きっと、傷つけられないオレに諦めて去っていくだろう。
今は耐えるしかないか。
そう自分を落ち着けたが、次の瞬間には驚愕することになった。

カチャカチャ

「・・まさか」

壁の向こうから金具の音。下腹部でゴソゴソ動く感触。
ーーーベルトを外されている。

「おい!やめろ」

ゴブリンやオークといった魔物が
人間相手に交尾を行う場合があることは知っている。
特にオークは、力のない女性が攫われて無理やりということも珍しくはない。
ゴブリンの場合は一体一体は弱いが、数に押されて力ずくで攫われてしまうと言うこともある。
しかし、まさか男の自分がゴブリンに犯される危険に合うとは・・・

止めさせる方法はないかと考える。
手は壁に遮られる。魔法は発動しない。脚は埋まっていて動かせない。
オレにできること等、尻を僅かに動かすことくらいだ。
そんなことをしたところで、ゴブリンにとっては何の障害にもならない。
むしろただ滑稽に映るだろう。

・・・今のオレは隣の部屋にいるゴブリンに何もできない。

ゴブリンがオレのズボンと下着を一辺に降ろした。
腰から膝までが外気にさらされる感覚。

「ギィ!」

尻が両手で揉みしだかれる。
グイグイと円を描くように揉まれ、尻の穴まで空気に触れる感触がした。
これから起こることを考えて鳥肌がたった。

「くそ、やめろ!」

怒りに任せて怒鳴ったところでゴブリンは意に介さない。
ひとしきり弄って満足したのか手が離れた。
そして次には、尻の間にぬるい液体がかけられた。
指で尻の穴を撫でる感触がする。
先程駆けられたのは潤滑油だろう。
これほどうれしくない気遣いはない。

「やめろやめろやめろ!」

ツプン

指が入ってきた。

「クソーーー!!」

オレの頭は怒りに染まる。
殺してやる!今は無理でもいつか絶対に。
握りしめた拳が震えた。







指が最初に入ってから。
どれくらいが経ったのか。
尻の穴を小さな手が弄る感触。
不思議と痛みはなかった。圧迫感と気持ち悪さはあったが、それも薄れていた。
変わらないのは、ゴブリンに尻の穴を弄られている事実からくる強い嫌悪感。
オレは屈辱感に震えながらひたすら耐えていた。

今は最初の時よりも多くの指が入れられている感じがする。
オレの尻の穴は自身の意思に逆らって広がってしまっていた。

ゴブリンの指が抜けた。
次の瞬間には腰を両手で掴まれる感触。

「ーーーーー!」

怖気立った。

グヌウゥゥゥ!

「うああああああああああ!」

罵倒の言葉ではなく悲鳴が出た。
オレはゴブリンに犯されているのだ。

「やめろっ!抜きやがれ!ゴブリン如きがっ、殺すぞっ!」

黙って耐えることなど、出来なかった。
たまらず怒鳴りつけた。
オレは手が傷付くのも構わず、壁を殴り続ける。

「くそっ、くそっ、クソォォォォォ!!」

壁はびくともしない。
手の傷はすぐに治った。

絶望が襲う。


ゴブリンに犯されている。
下等な魔物の代表格のゴブリンに。
村人にすら勝てないゴブリンに。
俺が腕一振りすれば殺せるゴブリンに。
殴られたところで、俺に傷一つつけられないゴブリンに。

上位冒険者の、この俺が。
相打ちとは言え、魔狼を殺した俺が。

たった一枚の壁があるだけで、手も足も出ない。
今まで培った力が何の意味も持たない。
圧倒的に劣る魔物に良いようにされている。


ゴブリンは俺の絶望など気にもせず、腰を振り続けた。


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