7.二人目の犠牲者1 (ベテラン冒険者編ー壁尻)

このダンジョンに挑む切っ掛けはダンジョン産の武器を見たことだった。

オレ達のパーティは冒険者としての経験も深く、
そろそろ一流と言っても良いだけの実績を残してきた。
若いとは言えない年齢に差し掛かってきているが、まだ成長を続けている。
しかし、上がる実力に装備が追い付かなくなっていた。

全力で戦っても壊れない丈夫な武器がほしい、
魔物の攻撃を受けても壊れない防具がほしい。

そんな望みを持つオレ達に、
このダンジョンの宝箱で出現する武具は魅力的だった。
強力な魔法効果が付与されている装備、とても金をためても買えるものではない。

強力な装備を手に入れて今よりも高みを目指す。
そのためにこのダンジョンを探索している。


▽▽


「ハアッッ!」

相手の攻撃を防ぎ大剣を薙ぎ払うも、敵はスルリと脇をすり抜けて離れていく。

「そっちに行ったぞ!」

「ぐあっ、くそっ!」

今オレ達はダンジョンの階層ボスと戦っている。

白い毛並みを持つ巨大な狼。
素早い動きに加え、魔術まで使ってくる強敵だ。
小型の武器はその毛皮に阻まれ攻撃が通り辛い。
重量級の武器は避けられてしまう。

決定打のないまま長引く戦いに、回復用のポーションも尽きてしまった。

「フレイムランス!」

「ガアァァ!!」

仲間が攻撃魔術を放つが、狼の魔術で相殺されてしまった。
仲間たちの魔力も残り少ない。

このままだと狼を倒すより先に全滅してしまう可能性が高い。

オレは賭けに出ることにした。
向かってくる狼の攻撃を避けずに大剣を振り下ろす。

狼の爪が鎧ごとオレの腹を切り裂く。
そして同時に振り下ろした大剣が狼にめり込み爆発した。

「ギャオオォォ」

狼は断末魔の悲鳴を上げて横向きに倒れ伏した。

このダンジョンで手に入れた大剣が役に立った。
これがなければ全滅していただろう。

「グレン!」

仲間たちがオレの元に駆けてくる。

「どうしよう、血が止まらない!」

「魔力が足らなくて回復魔術が追い付かない!」

「ポーションももう残ってないぞ!」

「頼む、死なないでくれ!」

仲間たちが必死にオレを助けようとするが、手が無いようだ。
全身の力が抜けていく。
オレはここで死ぬのだろう。

「ぐ・・う・・お前たちだけでも助かってよかった。・・・この剣のおかげだな。・・・宝箱で手に入ってよかった」

死ぬことは覚悟していた。
出来れば仲間たちの枷にはなりたく無いものだ。
だんだんと意識を保てなくなってい来た。

「・・・お前・・・たちは・・・しぬなよ・・」

「グレン!」

涙を流す仲間に囲まれて、俺の意識は闇に沈んだ。


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