90.お家訪問

8日目。

「今日はクラウスの家に行くぞ」
「・・・はい?」

朝起きたクラウスに告げる。
ケツイキを覚えて一段落したから、普段のクラウスを見てみたいと説明した。
すると、不思議そうな顔をされながらも了承してくれた。

「・・・・・・んっ」

朝食を食べ、出掛ける準備そしている最中。
8日ぶりに服を着たクラウスが何やら微妙な顔をしている。

「どうした?」
「その・・・胸に・・・服がこすれて・・・」
「ああ、感じちゃったのか。服を着るの久しぶりだからな」
「はい・・・・」

服を着ただけで感じてしまったのを恥ずかしそうにしながらクラウスが答える。
開発しすぎたかな。
まあ、毎日服を着る用に戻れば慣れるだろ。
着替えをしてカッチリした服に身を包むと、クラウスは普段の真面目な姿に戻った。

準備ができると、俺達は宿を出てクラウスの案内で家に向かった。
流石騎士隊長の家。
あまり大きくはないが、そこそこの良い土地に庭付きの一戸建てを建てているようだ。

「ただいま戻ったぞ」
「あなた!おかえりなさい」

クラウスが玄関の扉を開けて声をかけると、中から綺麗な女性が出て来た。
この人が奥さんなのか。
小柄で華奢な感じは守ってあげたくなるタイプかな。

「来週まで戻らないって言ってたのに。どうしたの?」
「町の救世主殿が家に来たいと言ったから、お連れした」
「まあ!もういらっしゃってるの?」
「こちらが街を救ってくださったミノー殿だ」
「始めまして、ミノーです。突然お邪魔して申し訳ありません」
「ミノー殿、妻のマリアです」
「始めまして、クラウスの妻のマリアです。いえいえいつでも大歓迎ですわ」

クラウスがお互いに紹介してくれると、マリアさんに上品な礼をされる。
綺麗な所作だし、良い所のお嬢さんなのかもしれない。

「大したおもてなしはできませんが、どうぞお上がりください」
「ありがとうございます」

マリアさんに促され、俺達は家の中に入って行く。
居間に通されると、そこには小さな男の子がいた。

「とうさん?」
「テオ、ただいま」
「おかえりとうさん!」

男の子はクラウスに走り寄ってきて、そのまま脚に抱き着いた。
クラウスは抱き着いて来た男の子の頭を撫でる。

「テオ、こちらはミノーさんよ。ご挨拶をしなさい」
「テオです。いらっしゃいませ、ミノーさん」
「ああ、よろしくねテオ君」

テオ君は目測3歳くらいで、俺の腰ほどの身長もない。
目元はクラウスにそっくりなので、将来は男前に育つだろう。

「テオ、ミノー殿とお話しするから一人で遊んでいなさい。出来るね」
「はぁい」
「良いよ、クラウスはテオ君と遊んであげなよ。俺はちょっと奥さんと話しているから」
「いえ、そういうわけには」
「気にするな、今日はクラウスの家族がどんな人なのか見に来ただけだし」
「そうおっしゃるなら。マリア、ミノー殿を頼むぞ」
「はい、精一杯おもてなしさせてもらうわ。此方にどうぞミノーさん」
「テオ、行くぞ」
「うん!」

俺はマリアさんに促されテーブルに着く。
クラウスはテオ君を抱き上げ、同じ居間の広いスペースに連れて行った。

「今お茶を入れますね」
「ありがとうございます」

テーブルのすぐ傍の台所で、薬缶を火にかけるマリアさん。
お湯が沸くのを待つ間に、俺の向かいの席に着いた。

「ミノーさん、ありがとうございました」

席に着くや否や、マリアさんは深々と俺に頭を下げてきた。
いきなりどうしたんだ。

「何がですか?」
「夫のことです。今回のスタンピードのことを聞きました。すごく強い魔物が出て騎士隊も危なかったって。それを助けてくれてありがとうございます」
「ああ、そのことですか。お気になさらず。俺が好きでやっただけなので」
「それでも、あの人が無事に帰って来ただけで、感謝してもしきれないくらいです」
「それなら、礼は受け取ります。」

そう言うと、やっとマリアさんから力が抜ける。
そのころになって、やっとお湯が沸いたのでマリアさんがお茶を入れてくれた。

「どうぞ」
「ありがとうございます」

温かいお茶を頂いて、ふうと息を吐く。
お茶の味に詳しくはないけど、おいしいお茶だと思った。

「あの人は今ミノーさんのところで働いているらしいですが、お役に立てていますか?」
「ええ、とても助かってますよ」

まあこれは嘘じゃない。
非常に楽しませてもらってますからね。

「ところで、普段のクラウスについて教えていただけませんか?」
「はい、構いませんよ」

マリアさんはお茶を一口飲むと、静かに語り出した。

彼女から見ても、クラウスはとても真面目でストイックな男らしい。
それはもう心配になるくらい。
騎士隊長になるくらいだから、強いし優秀だって判っているけど、いつも最初に自分を後回しにするから心配なのだと。
いつか突然家に帰って来なくなるんじゃないかと、心のどこかで思っているらしい。
家ではいつも自分も子供も大切にしてくれるし、良い夫で良い父親ではあるようだ。
テオ君の世話も遊び相手も喜んでやっているそうだ。
テオ君もクラウスのことが大好きで、将来は騎士になると言ってきかないらしい。

「真面目な所も、周りの人を優先する優しさもあの人の良い所なんですけどね」
「ありがとうございました。やっぱりクラウスを助けてよかったですね」

一通り聞き終えると、俺達はお茶を飲み一息つく。
クラウスの方を見てみると、テオ君を膝にのせて何か話を聞かせているようだ。
テオ君は話を聞いて興奮しているようで、楽しそうにしている。

「そろそろ、お暇しましょうかね」

クラウスの話も聞けたし、家庭での父親としての姿も見ることができてよかった。
俺はクラウスを呼ぶために、二人に近づいていく。

「クラウス」
「ミノー殿。どうされました」
「そろそろ帰るぞ」
「承知しました。テオ、また今度な」
「うん、まってるね」

帰ることを告げると、クラウスはテオ君を抱き上げて立ち上がった。
帰ることを言い聞かせると、テオ君は残念がりながらも受け入れた。
聞き分けが良い素直な子だ。

俺はクラウスを連れて帰ろうとする。
マリアさんとテオ君は玄関まで、見送りに来てくれた。
心なしかテオ君の目が輝いている気がする。

「いってくる」
「ではまた1週間クラウスをお借りしますね」
「お気を付けてお帰りください。是非またいらしてくださいね」
「またきてください」
「ありがとうございます」

二人で宿へ向けて歩き出す。
話し込んでいたせいでもう夕方だ。

「ところで、テオ君にはどんな話をしてたんだ?」
「スタンピードの時のミノー殿の話を」
「それは・・・」

だから、帰り際のテオ君が目がキラキラしてたのか。
あれか、身近な英雄を見る目か。
ちょっと照れるんだが。

宿に帰ると夕飯を食べ、一発ヤっただけで寝ることになった。



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