彼、シャルティエ少佐が私を呼び捨てにするようになってから数日が経った。
「ケイカ中尉、あの、もしよろしければ今日…」
「ごめんなさい、今日は用事があるの」
「そう、ですか…なら明日は!」
「残念ねー、明日は私がケイカと飲みに行く予定なのよ」
最近、毎日のように兵士に飲み会に誘われるようになった。
シャルティエ少佐の命令で毎回断ってはいるけれど、こうも毎日だと断る理由も尽きてくる。
アトワイトやハロルド、カーレルが助け船を出してくれるのが本当に有り難い。
「ふぅ…今日これで何人目?」
「10人は超えたかも」
こきり、と首を鳴らしながら言うハロルドに溜息を零しながら答えると"うげ"と眉を寄せた。
「やーね、懲りずに毎日毎日」
「誘ってくれるのは有り難いんだけどねー。けど命令だから」
「あら、シャルティエの?」
「そうなの。
なんでかはわからないんだけど」
そういえば、ディムロスにも忠告?された気がする。
「ま、気をつけなさいよね?」
「ん?うん、ありがと」
たまたま居合わせただけのハロルドは研究があるからー、とひらひらと手を振ってその場を去っていった。
「さてと、
珈琲でも持っていこうかな」
誰に、シャルティエ少佐にだ。
珈琲ついでに新しい仕事を振り分けてもらおう。簡単な仕事ばかりを貰うから、時間が余って仕方ない。ハロルドやアトワイトのところに行こうかとも思ったけど、アトワイトはディムロスのところにいるだろうし、ハロルドのところに行けば"データ採取!"と叫んで身ぐるみを剥がされるだけだ。
シャルティエ少佐のところが一番安全、だからというのもある。
「シャルティエ少佐ー」
「ケイカ、どうしました?」
「珈琲、持ってきました。
あと、仕事ください」
にっこり、笑っていうと"ではこれを"と手渡されたのは印鑑と積み重なった書類だ。
「これは?」
「全て目を通したので、所定の場所に判をお願いします」
「これを、今日中に?」
「はい、頑張ってくださいね」
にこり、優しげに笑っているけれど、目が笑っていない。
「いつもの仕返しですよ」
「、やっぱり…!」
にこにこと楽しそうに笑うシャルティエ少佐を睨みつけた。むかつく、終わったらまた、データ採取と叫んであげようか。
「ケイカが、」
「え?」
「ケイカが僕を呼び捨てにして敬語をやめるのなら、書類は明日の規定時間までに終わらせてくれればいいです」
「…わかりました」
「ケイカ?」
「わかった。
…シャル、でいい?」
「はい、ケイカ」
ふわりと笑ったシャルから目が離せなくなった。
優しげに、けれどほんのり頬を赤くするシャルに、これまでにない気持ちが生まれるのを、ケイカはまだ気付いていなかった。
シャル呼び
20120110
久々更新です。
自分だけ敬語に階級呼びだったのが寂しかったシャルでした
8/18