相互コンプレックス


地面に座り込んでから、途端に肩が重くなって、一気に疲労感に襲われた。初めて技を使ったけど…技を使うってこんなに疲れるものなの?TP消費って、こんな感じ、なんだ。


「ルリ!!」
「大丈夫か?」


声のした方を見ると、主人公ルドガーと、ユリウスがいた。二人は焦ったように走り寄ってきて、ユリウスに立たせてもらったのだった。



ジョルジュ
(相互コンプレックス)




「怪我してないか?」
「大丈夫、」

「珍しいな、ルリがこの程度の魔物に苦戦するなんて」


眉を下げて、辛かったな。と頭を撫でてきたユリウスに、ありがとう兄さん。と言えば、ユリウスは嬉しそうに笑う。が、すぐに真面目な顔に戻る。














「きゃぁああ!」


「「!」」


突然、女性の悲鳴が聞こえて辺りを見回すと魔物に襲われそうになっている女性がいた。ルドガーと顔を合わせて頷くと、揃って駆け出した。

足が、軽い。身体が動く。いつも思う、まるで私の身体じゃないみたいに軽やかなステップを踏み、魔物の攻撃をひらりと避けていた。


「はぁぁぁあ!」
「いっけぇ、ルドガー!」


ルリのコンボからルドガーの攻撃が決まり魔物は絶命した。大丈夫ですか?と手を差し出すと女性は懐からナイフを出してルリに向ける。



「これはお前達の判断力を見る試験だった。…ルドガー、ルリ。二人共不合格だ」


こんなところに女性一人で…おかしいと思わなかったのか?と言われれば、確かに…と二人揃って俯いた。入社試験に不合格だったってことは、ルドガー無職ってこと?うわぁ…。
私は、駅の仕事に戻ると思うけど、ルドガーはクランスピア社にかけていたわけで。不合格だなんて、仕事をまた探さなきゃならないじゃない。


「二人共、帰ってゆっくり休め。
…今日はトマトオムレツがいいな」

「…わかった」

「兄さん、」
「ん?どうしたルリ」

「帰りは遅い?」


唐突に切り出したルリの問いにユリウスは吹き出し、ルドガーもユリウスを見た。先ほどまでとは違い優しい兄の顔をしたユリウスにルリは安堵した。


「今日は早く帰るよ。
だから、ルドガーと美味い飯を作っててくれ」
「わかった、じゃあ美味しいお酒買ってきてね。不合格だったからヤケ酒する」


あはは、と笑えばルドガーはルリの頭をぽんぽんと叩き、じゃあ俺もヤケ酒する、と笑う。

今日はルリの好きなものも作ろう、とクランスピア社からの帰り、二人で市場に寄って買い物を済ます。おばさんやおじさんが、これ持っていきな!とトマトとキャベツ、挽き肉を大量にくれたので、今日はロールキャベツとトマトオムレツが決定したのだった。


「ルリ、荷物」
「え、いいよ持てるもん」
「いいから」
「ルドガーのほうが重たいの持ってるでしょ」

「…俺が持ちたいんだよ。
ほら、寄越せって」


ぐい、ととられた袋。何も持っていないルリはむ、としたがルドガーの笑顔に溜息をつき、マンションまでの道のりを歩いた。


「ルドガーってシスコン?」
「いや、それ兄さんのことだろ」

「(アンタも十分だろ
っていう私もブラコンだけど)」



(相互コンプレックス)

20121108
20121110/修正

ユリウスさんはシスコン。ルドガーくんはブラコンなのでシスコンでもいいんじゃないかと思いまして(笑)

お互いに依存しあう、そんな関係の双子です。