絶対絶命シャウト



「…あちゃー…やばいなぁ」


囲まれた。気付いたときにはもう遅かった。近付いてくる魔物に、恥ずかしいことに足はがくがくと震えて、手に持っている剣を落とした。



ジョルジュ
(絶対絶命シャウト)




「…どうしよう…!」


殺されるかもしれない。確かに、魔物と戦ってきた。けれど一人で立ち向かったことはあまりないのだ。…魔物一体、ならあるけど3体以上も一人で倒そうと思ったことがない。(怪我したくないもん)

私は兄に主人公同様の魔物を倒せと言われた。

(私も、戦える、って兄さんは思ってくれてるのね)


考えてる暇はない。期待してくれてるのなら、やらなければ。きっと兄さんは、私にも倒せるから、言ったのだろう。…じゃあ。


「やらなきゃ、ね」


立ち上がって魔物を見据える。剣を落として後退りしていたから剣は魔物の近くだ。私の身体能力であそこまで行って無傷ではいられないだろう。戦い方、他に戦い方は?私にはなにができる?


「…拳、か…!

はぁぁあああ―っ!」


ドン、と魔物に拳を打ち当てると、その魔物が吹っ飛んで、ルリはホッと息を吐く。それほど、拳は痛くない。が、しかし


「っ、全然倒せない…!」


突けども突けども、体力は減っているだろうが倒すまでに至らない。

群がるように近付いてくる魔物に、一度は遠退いた恐怖が再び巡る。

ルリ目掛けて魔物が攻撃を仕掛けてくるも、ルリは防御の術がない。ナックルを付けておらず、装備なんて何もしていないのだ。


「っ、きゃぁあ!!!」


―…ドン!















「……あ、あれ?」


どうにでもなれ!と魔物に向かって突き出した拳。先ほどまでとは違い、なにかを纏ったかのように拳を突き出す速度も、威力も違っていた。


「私、格闘タイプで戦えるのかも」


うん、と頷いて頭に巡らせるのは技の名前。何がいいかな、最初だし簡単なやつ…と考えていや矢先、突然頭に直接響く、声。



「…魔神拳!」



ザァァァアア、と地面を這い、それは魔物に向かっていった。断末魔を上げて絶命していく魔物。
技が出せるならイケる!とやる気を出した、ルリは次々と魔物を倒し、ユリウスに指定された数の魔物を倒し終えると、へなへなとその場に座り込んだ。


「お、わったぁ…」


こうして魔物を戦うと、自分がトリップしてきたんだと改めて考えてしまう。あちらの世界では魔物なんていないし戦うなんて有り得ないし、剣なんて持ってたら捕まるんだから。

なんで此方に来たかはわからないけど、あの時聞こえたあの声に呼ばれたんだと思う。


「私に、できること、あるのかな」


主人公の兄妹だから、私にも戦う力があるのだから、きっと、きっと。
あまり使いたくないけど、医療黒匣もある。皆を回復してあげられる。



きっと、これから私にも、選ばなきゃならない時がくる。


(02 絶対絶命シャウト)

20121107
20121110/修正

修正はしましたがあまり修正というほどしてませんね。
トリップか転生かの違いでヒロインの心情も変わりますし…今修正しているヒロインのほうが打ちやすいですし、ルドガーやユリウスとも絡ませやすいです(笑)

とりあえず、次はルドガーとユリウスと絡ませようと思います。