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おはようシスター
「起きろ、ルリ、起きろって!」
目を開けると、大事な双子の弟が私を見下ろしていた。
心滅ジョルジュ
(おはようシスター)
「やっと起きた…って、寝坊したのは俺も同じだけど」
「ごめん…今日、なんかあったっけ」
しっかりしろよ…と溜息をついた私と同じ髪色、メッシュの入った髪をした、双子の弟ルドガーがそこにいた。着ている青い服は兄、ユリウスが私とルドガーに色違いで買ってくれたものだ。二十歳にもなって…と言われるかもしれないが、私とルドガーは仲が良いし、兄ユリウスとの仲も良い。
街で有名な仲良し兄弟なのだ。兄、ユリウスはイケメンで有名な大企業クランスピア社の結構いい地位にいるし、ルドガーもイケメンだし。
とりあえず、いまだ寝起きで頭が働かない状況の私は、ルドガーをぼーっと見ているだけだった。
「ルリ?」
「んー…」
「今日はクランスピア社の入社試験だろ。兄さんが待ってる。早く着替えて準備しろよ?」
「…わか、たぁ」
過去、違う世界(元の世界)に姉がいた。生まれて物心ついたときにはもう昔の記憶のまま私はいたから、可愛いげのない子供だった自覚がある。(バレないように子供っぽく振る舞ってたけど)
ユリウスを兄と呼ぶことに抵抗…というか違和感はあったけれど、暖かいユリウスに私はすぐに懐いた。(兄が欲しかったのだ)
ルドガーに準備しろと言われたのでベッドからおりる。部屋には必要最低限の物しか置いていないが、ルドガー、そして兄さんと撮った写真は数個飾ってある。大事な宝物だ。
そして、壁にかかっていたのは先程のルドガーとほとんど作りが同じ服。スラックスじゃなくてキュロットってのが違い。あとは色くらい。
いそいそと着替えて、扉の向こうではルドガーがいまかいまかと待機していたようで、
「よし、急ぐぞ!」
「え、え?ちょ…!」
腕を捕まれて部屋から飛び出す。一応私の歩幅に合わせてくれているようで走りやすい。これから何処に向かうのかわからず腕を引かれるままについていくと、どうやらクランスピア社の地下訓練所らしい。
―…夢で見た、白いコートの、人。なんども見る。ここに来る前も、来てからも。
「遅刻だぞ、ルドガー、ルリ」
「ごめん、兄さん」
「今日はお前達の試験官だぞ?
クランスピア社の入社試験は厳しいからな。コネでなんとかなるものじゃない。兄だからって甘くはしないぞ」
クランスピア社、兄が勤めている会社だ。優秀な兄が、私は誇りだ。此方の世界で出来た、大切な家族。無くしたくない、大事な人達。
「お前達にはそれぞれ、ここに放たれた魔物5体を倒してきてもらう。協力は禁止だ。
それと、ここはトリグラフ全域に繋がっているが、ここから出た時点で試験終了、失格となる」
質問は?と問われて首を振る。じゃあ二人共これで倒してこい。と剣を渡されて、くるくると回した。…剣に触れるのは久々だ。
初めて剣を触ったのは10歳の時。怖くて、この世界に来たことを初めて後悔したときだ。
それから、兄さんがたまに特訓してくれて、剣を使えるようになった。
たまにクエストを熟しながらお小遣いを貯めたりしているし。
そういえば、ルドガーは私が買うつもりだった、あのゲームの。
(ゲームの、主人公)
内容は概要しか知らないから、私は何もできない。ただ、それを見ていることしかできないだろうと思う。
「ルリ」
「え、はい」
「ルドガーはもう行ったぞ?お前も、早く行くんだ」
「…はい」
クランスピア社の入社試験。ルドガーがずっと夢見ていた会社だ。かく言う私も少しだけ憧れていた会社だったりする。ヴェルが勤めているし、給料もいいのだ。
頑張りますか、と渡された剣を握りしめて、私は駆け出した。
「…ルリ、すまない」
ぽつり、呟いた「兄」の声は、私に聞こえることはなかった。
(01 おはようシスター)
20121107
20121110/修正
修正に修正を加えました。
初めに公開したものと全く違います。
所々同じですが、ヒロインは20年、ルドガーと双子、ユリウスと兄妹として生きてきたので、情もありますし愛もありますし、信頼もしています。
なので最初に公開していたときよりも二人に依存しているのです、はい。