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衝撃サプライズ
「ん…、」
身体が重い。
うっすらと目を開けると目の前には端正な顔立ちをした男があった。
「残念、起きたみたいだね」
「っ、な、な…!」
「なにって?…ただ、キス…しようとしただけだよ」
ふ、と笑う男に、ルリは拳を作る。なんか、すごくイライラする。
「無事で良かったよ、トリグラフの華、"舞い降りた天使"さん」
「…その呼び名はやめてください」
目を閉じて、ルリは言う。「わかったよ」と言った男の声は、楽しそうで、ルリは歯を食いしばった。
心滅ジョルジュ
(衝撃サプライズ)
「、え…?」
テレビのニュースに、ルリは耳を疑い、画面に釘付けになった。背後からは、誰かが動いた気配。
『―…完成したばかりの自然工場アスコルドへ暴走した列車が脱線衝突し、大破しました』
「列車テロだってさ…物騒だねぇ」
赤色のスーツを着た男は、カウンターに座りニュースを眺めながら、まるで人事のように言う。
「何がどうなってる?」
目が覚めたらしいルドガーの声、振り向くとテレビを見ながら、問う。
「ここはドヴォール
線路脇で君達を見つけたんだが、病院は怪我人でいっぱいでね。やむなくここに運んで治療した、というわけさ」
立ち上がり、ルドガーに向き直る男をルリは信用できない、というように睨みつける。怖いねぇ、と心にもないことを言う男に、ルリは溜息をついた。
「…ルドガー。平気?」
「あぁ…ルリは?」
「私も平気」
「リドウさん、ルドガー達の様子はどうですか?
あ、目が覚めたんだね!痛むところない?」
「大丈夫、ジュードは?」
「僕も大丈夫だよ、ありがとうルリ」
「問題なく治療は完了。全員ね」
エルはソファに寝ており、まだ起きそうにない。
「さすが、クランスピア社の医療エージェントですね」
「いやいや、俺の医療黒匣が精霊術より優れているだけだよ」
ジュードの言葉に、リドウは笑って嫌味を返す。言葉に詰まったジュードのGHSが鳴り、着信らしく「ごめん」といいながら店を出ていった。
ルドガーは、まだ眠っているエルを見、机に置かれている時計に目線を移し、手に取る。ちょうど同じくらいに、唸ってから、ゆっくり目を開けたエルは目線の先にルドガーを捕らえ、手には時計があったことから、ぱっと起き上がり「エルの時計!返して!」とルドガーの手にある時計を取ろうとする。
「これは兄さんの時計だ!」
「ちがう!パパがエルにくれたのだってば!」
半泣きのエルは、ルドガーをぽか、と殴り高い位置にある時計を取ろうと飛び跳ねる。うぐっ…と苦しそうな声を上げるも、ルドガーはその時計をポケットにしまった。
「エルの時計とったー!」
ルリは、ドロボー!と叫ぶエルの頭を撫でて目線を合わせる。エル、と名前を呼べばエルは「なに、」と唇を尖らせてルリを見た。
「パパの時計だった?」
「絶対、絶対パパのだもん」
「そっか…でもねエル」
さっきの男の人が持っていたのも、エルの時計と同じようなものだったんだよ?と言えば、エルは「ホントに?」と問うた。
「だから、今は保留にしとこ?
まだ起きたばかりなんだから…ね?」
「…うん、わかった」
「いい子ね、」
にっこりと笑いまた頭を撫でると、エルは頬を染めて「エルはいい子だもん」とそっぽを向いた。
「ルドガー、アンタは大人げない」
「ぐっ…」
「小さい子と女の子には優しく!っていつも言ってるでしょ?」
がくりと肩を落としたルドガー。
「話は終わったかな?
三人合わせて2400万ガルドだ」
「えぇ?!」
「治療費だよ、君達の命の値段」
「エル、お金なんて持ってない…」
「そんな大金…!」
リドウはエルの鞄を掴みそのままエルを持ち上げる。どうしよう、とエルが呟くと、リドウはソファに落としてエルの頭を掴む。
「ひっ…」
「、リドウ!」
「稼ぐ気さえあれば、金をつくる手段はいくらでもあるんだよ。
子供だろうが、なんだろうがな」
リドウの声は低く、小さいエルの恐怖心を煽るのは簡単で。がたがたと震え出したエルに近付き、正面からリドウを睨みつけてその手を掴む。離せ、と言いながら。
「怖いねぇ」
「、思ってもないくせに!」
ルドガーはエルの頭を掴むリドウの腕を掴み、離せと低い声で言い放った。
「おっと力ずくかい?…でも、社会のルールは守ろうぜルドガー君」
はは、と笑うリドウに苛立つ。社会のルール?なにそれ。
「私達、別に治療なんて頼んでないけど」
「人の好意なのに…酷いな」
「好意でやったなら、金なんて取らないでしょ。ホント、セコいし卑怯だし陰湿ね
だから出世しないのよ」
だから、と強調して言うと、リドウはぴくりと口の端をひくつかせるも直ぐにいつもの飄々とした態度に戻り咳ばらいをした。
あぁ、もう…イライラする。
(撃沈サプライズ)
返済に何年かかるのよ…!
20121114
リドウさん登場。
絡みは少ないけど、過去の関係とか色々関わりあるからリドウは楽しい。口調は迷子だけど(←)