落照の獄(『丕緒の鳥』収録)
小野不由美 著
(新潮社)

今まであまり語られなかった柳国のお話です。
『風の万里 黎明の空』『帰山』(『華胥の幽夢』収録)『黄昏の岸 暁の天』などで、国が傾いていると聞いていましたが、内情は不明でしたよね。
楽俊は柳国で役人の横領があると聞いて「ありえない」と言って驚いていました。
柳国は法治国家です。今の劉王は賢君として名高い治世百年の人だとか。
しかし、劉王は政治に興味を失ってしまった、と噂されています。

この話は司刑・瑛庚(えいこう)が主人公です。
日本で言う最高裁判所の裁判長(←たぶん)を務めています。
彼は難題に向き合っていました。
強盗殺人を十六件、二十三人を殺した豺虎(けだもの)と呼ばれる男――狩獺(しゅだつ)をどのように裁くのか。

柳国では「死刑はならぬ」と王が宣言しています。
これまで大きな犯罪が起きようとも、死刑だけはありませんでした。
これが瑛庚をはじめ司法を司る役人たちを悩ませています。
民は王の言葉を脇に置き、狩獺を死刑にせよ、と言います。しかし、情に流され、死刑を言い渡したところで、亡くなった被害者は還ってきません。
さらに、瑛庚が最も恐れていることは「死刑を許した一例を作ることで、法律が崩壊すること」でした。
役人の間でも、王は政に口を出さなくなり、放任していると言われていました。
国が傾いている、瑛庚も感じているところです。
彼は「法律」を守ることで、崩れかけている王朝に歯止めを効かせようとしています。
法律が崩壊したら、柳はお終いだ…そう思っていると感じます。

悩んだ末に出した結論は、「死刑もやむをえない」
人間の小さな力では、天の理が大きく作用する国をどうすることもできなかた・・・。
悲しい結末になりました(;_;)

しかし、例え死刑以外の判決を下すと、怒りが収まらない民がどっと役所に雪崩れ込んできて、内紛が起こったかもしれません。
難しい話ですね…。

何とか立て直してほしいですが、、、そもそも劉王本人が登場していないので、彼がどのような心境かわからないので判断できません(--;)
今までの十二国記の話の流れだと、一度傾いた王朝が持ち直したという事例は極めて少ないようで…。
恐らく、近いうちに劉麒失道の報が各国に広まるでしょうね。
この狩獺の件が、国の傾きに大きく関わる原因だったと判明しても、どうか瑛庚に不幸が降りかかりませんように、と願うしかありません(-人-)

2013/08/11



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