昔のふたり2-1
しとしと、
サァサァ、
ひたり、
コトリ、
ミルクティーの入ったカップを置いて、七海は、ほっと息を吐いた
朝から降り続ける雨は止む気配がない
椅子に深く座り直すと、抹茶色のソファが小さく鳴いた
今日はもう諦めよう…
手元に目を落とす
目の前のノートは、数時間前と変わらず真っ白のままだった
雨のせいだ…
ぐっと、こめかみを押さえ、やわやわとほぐす様に揉む
むわりと周りに立ち込める雨の匂いに頭痛がした
おいで、潤
頭痛いんだろ?
ほら、こっち
わ、お前冷たいなぁ
目ぇ瞑りな、起きる頃には止んでるだろ
・・・・ん?
はぁ。
お前は・・・まったく
あのな、好きな奴に優しくできるってのはすげぇ嬉しいことなわけ
迷惑なんかじゃねぇんだよ
なぁ、潤
俺はいつでもお前に優しくしたいし、思いっきり甘やかしてやりたいし、大事にしたい
好きな奴に優しくできないなんて悲しいだろ
だからお前がこうやって弱っている時に、抱きしめてやれて
俺、すごい幸せなんだぜ?
睫毛を震わせて、ゆっくり目を開く。少しの間眠ってしまっていたらしい。
雨は、静かに振り続けている。
ポケットから携帯を取り出し、受信ボックスを開く。
すべて同じ人間からのメールで埋め尽くされたそれを、しばらくぼんやりと眺めた後、メール作成画面を開いて、指が止まった。
ゆるりと、画面をひと撫でして電源ボタンを押す。
七海はそれを、愛おしそうに両手で包んで、またポケットにしまった。
[ 5/16 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]