お料理
ギルは今、目の前の暗黒物質と戦っていた。
何だこれは。俺はただ、久しぶりの上陸に船番である4番隊以外のほとんどのクルー達が浮足立って船を下りていく中、この町は治安が悪いからという理由で兄貴に上陸を禁止され、当の兄貴も買いたい本があるとかで構ってもらえず暇で暇で仕方なかったので、たまたまキッチンのテーブルに置いてあったレシピを見つけ、たまたまそれを作るだけの材料が全てそろっていたので、作ってみたのである。
そう、俺はそんな流れでクッキーを作ったはずだった。料理などしたことなかったが(包丁を使うなだとか、火の周りに近づくなだとか周りが煩かったから)、要は粉をこねてその生地を型取りして焼くだけだろうと。しかしどういうわけか今自分の目の前にある物はお世辞にもクッキーとは言えなかった。以前サッチが作ってくれたものはこんな見た目はしていなかったし、ほのかに甘い食欲をそそる匂いをしていた。しかし目の前の物体からは危険信号しか感じられない。口に入れていいのかさせ疑わしい。
何だこれは。俺はもう1度口の中で小さく呟いた。
「ん?なんだギル、キッチンになんか用か?」
そこに、白ひげ海賊団1空気の読めない男、サッチが入ってきた。ギルが対峙している物を見て眉を寄せ、何だこれと呟いた。
「別に、何だっていいだろ」
傍らに置いてあった簡素な手書きのレシピをサッチに見られまいと急いで隠そうとするが、それより1歩早く取り上げられてしまう。サッチはそれを見て全て納得がいったというようにギルの肩をポンと叩いた。
「サッチ様に任せな、ギル!」
かくして、ギルとサッチのマンツーマンの料理教室が始まったのである。
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