兄貴自慢(過去拍手)
放課後の教室。夕日に照らされ朱く染まった室内に、ムシャムシャバクバクと凡そ似つかわしくない音が響く。
「ほっへーなぁひふふほも」
「食べながら喋んな。食べかすも飛ばすな。馬鹿ルフィ」
ばしん、とルフィの頭をしばく。
口の中のものをもきゅもきゅと咀嚼し、大きく喉を鳴らして飲み込んだルフィはもう1度言い直す。
「おっせーなぁ2人とも!」
「そうだな」
ギルとルフィの2人は今、一緒に帰宅するために自分たちの兄を待っているところだった。ルフィの兄であるエースは2人より2歳年上の3年生で、ギルの兄であるマルコはその担任である。
「そもそも、エースが赤点なんか取るから、俺と兄貴まで帰りが遅くなってんだろ」
成績がお世辞にも良いとは言えないエースのせいでマルコがこうして放課後に補習を行っているのである。
先程まで手にしていた菓子パンを食べ切り、購買で買ってきたアンパンに手を伸ばしているルフィをもう1度しばく。
「いてっ!」
「兄貴だって、最近疲れてんのに……」
「んまーしょうがねぇよ。エース馬鹿だから!」
「笑って言うな!」
お前も人のこと言えないだろ、と睨みつけるが、この能天気馬鹿にはまったく意味がないらしい。
「でもよー、馬鹿でもエースはすっげぇんだぜ」
「何がだよ」
「だって、すげー運動できるし、俺の弁当毎日作ってくれるし、昨日の夜ご飯なんてから揚げだし」
「はっ」
「あー!今馬鹿にしただろギル!」
「俺ん家は昨日オムライスだった」
「ぬあにいいいいい!?」
「トロットロの卵に、綺麗に包まれたチキンライス。絶対不器用なエースにはできないね」
「うまほー」
「それに運動だって勉強だって兄貴のほうができるし」
「いや、エースのができる!エースはサッカー部のキャプテンだぞ!」
「兄貴はそれを指導するコーチだけどな」
「それにすんげー優しいし!」
「兄貴は俺が風邪ひいたら、1日中傍にいてくれるもん」
「俺は風邪ひかねぇ!」
「馬鹿だからな」
「エースは俺が体育で転んだ時、教室の窓から飛び降りてきたぞ!」
「兄貴は俺を担いで保健室まで連れてってくれた」
「エースの腹筋はすげぇんだぞ!卵パックみてぇだ」
「ただの筋肉馬鹿じゃねぇか。兄貴の方がエースより背が高いね」
「それにサッカーも上手ぇ!この前の試合もエースのおかげで勝ったしな!」
「兄貴は高校時代、全国大会で優勝した」
「エースはパイナップルじゃねぇしな!」
「黙れ」
「ん?バナナか?」
「髪引っこ抜くぞ。エースだってワカメじゃねぇか」
「風呂で背中流してくれるしなー」
「……お前らまだ一緒に入ってんのか」
「ギルはマルコと一緒に入んねぇのか?」
「……た、たまにだけだ」
「俺が頼めば肩車してくれんだぜー」
「兄貴は俺がソファで寝たら、ベッドまで運んでくれる」
「なにっ!エースは一緒にソファで寝るぞ!」
「狭いだろそれ」
「頑張る!」
「ふんっ。まぁエースより兄貴の方がいい男って事ははっきりしてるな」
「なにー!エースはモテモテだぞ!」
「兄貴よりいい男なんてエドワード校長くらいだね」
「エースだって!」
「兄貴の方が」
教室の外にて
(ルフィ……兄ちゃん嬉しい)
(何時になったら終わるんだよい)
(マルコ、顔あけーぞ)
(黙れよい)
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