一目惚れ








 白ひげの船に乗ってから2週間、俺は今日も白ひげの首を取ろうとして軽くあしらわれていた。軽く、本当に軽くアイツが腕を一振りしただけで凄まじい衝撃に吹き飛ばされ、そのせいで壊れた船の壁を直しておけと怒鳴りつけられる。初めのうちは、吹っ飛ばされて倒れている俺に敵意を向けてくる奴もいたが、今じゃ「今日もやってんのかエース」とからかわれる始末。まるで俺がこの船のクルーになることを受け入れているような態度にイライラする。そして何より、エース自身が白ひげの懐のデカさに、クルー全員を息子だと愛し、そのクルー達から親父と呼ばれ慕われている存在に、惹かれ始めていることを、そろそろ否定できなくなっている。
 エースはぶんぶんと頭を振った。それと同時に腹から盛大な音が響く。そういえば、この船に乗ってからまとまな食事をとっていない。そろそろ限界だと腹が訴えているのだろう。腹が減っているから変なことを考えるのだと、無理やり己を納得させ、今日もこのまま肌寒い甲板で寝ようと(部屋は用意されていたがエースが拒否していた)体勢を整えていると、ふとこちらに近づいてくるひとつの気配に気付く。
 
 角から現れたのは、まだ幼さの残る金髪の少年だった。まさかこの船に自分よりも年下のクルーがいると思わず、エースは目を丸くした。自分の弟と同い年くらいだろうか。その手には毛布と湯気の立つマグカップが2つ握られている。
 エースはどうしたものか、と頭を掻いた。他のクルー、例えば4番隊隊長だというリーゼントが気を使って食べ物を持ってきても邪険に追い返すことができるが、この少年に同じ態度を取るのは些か気が引ける。故郷においてきた弟のせいでとことん兄貴肌なエースは、どうやってこの少年を追い返そうかと、寝転がっていた甲板から体を起こした。









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