俺の声は彼のもの | ナノ

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食堂はいつも通りガヤガヤとしていた。

紺の友人が丁度席を退くというのでそこに座った。俺は昼はサンドウィッチと軽い代わりに夜は沢山食べる。
でも今日はなんだかさっぱりしたものを食べたい気分。

ということでかけうどんをチョイス。紺は渋くサバの味噌煮定食に決めたらしい。

二人で何をするわけでもなく料理が来るのを待っていると、耳に聞きなれた音楽が流れ込んできた。

「あれ?今日、夜の放送するなんて連絡来てたっけ?」

ピンポンパンポンと食堂の中央にある大きな柱についたスピーカーから放送が流れる。紺は放送委員のグループLINEで予定の確認をしている。

俺はスピーカーから流れる次の音を待った。

『休んでいる所失礼する。風紀委員だ。』

聞えてきた声は上条委員長のものだった。

途端、食堂中から黄色い声がわきあがる。そう言えばあの人は人気ものだったっけ。最後に会ったのがアレだったためなんだか気まずい。

『えー、明日高等部全体で風紀チェックを行う。時間はそうかからないが、制服の原型が無いような奴は対象となる。勿論、持ち物チェックも行なう。せいぜい明日だけはおかしなものを持ち込まない方が身のためだ。』

スピーカー越しでもワイルドな感じが滲み出ている。流石だ。

「なんか急だね。帰りが遅くなるのやだなー」

紺のつぶやきに一つ頷いてうどんをすする。俺は制服もきちんと着るし、カバンには教科書や筆箱、プリントしかいれていないから関係のない話だ。

ガヤガヤとより騒がしくなった食堂内。うるさいなぁ、と思ったその時、俺の頭にぽつんとある考えがうかんだ。

風紀チェックは風紀委員と教師で行われる。風紀二名と教師が一人が教室内を練り歩き違反者がいるとその場で減点または放課後お呼び出しの通達をする。全クラス一斉に行われるため、職員室はもぬけの殻となる。

そうだ。これしかない。職員室から人が消えるということはあそこにも人がいなくなる。その隙に…!

浮かんだのは完ぺきな作戦。


思いがけず終わりの兆しを見せた悩みの種にほっと一息をついた。

なんとしてもテストまでに解決させたかった。俺はここに通わせてもらっているのだ。残念な成績など取れない。

これで良いんだ。ちゃんと計画通りやれば、誰にも見つかることなく南の要求を達成することができる。

そう思い俺は 殻になったうどんの器に顔を落としながら。ぎこちない笑みを浮かべた。





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