俺の声は彼のもの | ナノ

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「そういえば、今日は沢本くんと一緒じゃないんだね」

土岐くんより下にある俺の顔を見ながらそう言われた。
見下ろされてる感じがしないなんて流石土岐くんだ。

俺は返事代わりに縦に首を振る。

学校じゃ声が出せない俺に紺はいつも一緒にいてくれる。放課後だって委員会のない日は紺と一緒にいる。
紺だって、他に友達が沢山いるのに。

俺はやらなきゃいけない事があるから、これからは学校では紺とは距離を取るつもりだ。学校にはあの南がいる。変に紺に目を向けて欲しくない。

紺を巻き込む事なんて出来ないから仕方ない。いつも一緒にいる分紺に迷惑が掛かる可能性があったから。

「何かあったら言ってね。力になるからさ」

そう言って微笑む土岐くん。
思えば土岐くんには助けられてばかりだ。日誌の時とか体育祭のパン食いの時とか。

ありがとう。

そう思いながら精一杯の笑顔で返した。



結局土岐くんはドアの前まで送ってくれた。持っていたメモ帳にありがとうと書いて渡すと、どういたしまして。と言って土岐くんは帰っていった。

部屋に入ると紺のローファーがあった。

紺帰ってきてる…もうこんな時間だ。紺食堂行くの待っててくれたのかな。

共同スペースにある時計を見るともう6時半過ぎだった。図書室に長居し過ぎたみたいだった。

コンコン

「?」

紺の部屋をノックしたが反応が無い。

「紺ー?」

名前を呼びながら部屋を開けるとそこには紺の足が。上半身はベッドが邪魔で見えない。

「紺っ!?」

教室で別れた時は元気だったのに!なんで!

慌てて紺に駆け寄る。「だいじょ!……ぶ…」

「ぐへへ…はは…」

そこには高価そうなヘッドホンをした紺が寝そべりながらだらしない顔で漫画を読んでいた。

まだ俺に気付いていないようなのでそろりと近づく。
本を覗けば案の定肌色多めの漫画だった。
男らしい男と可愛らしいショートカットの女の子の話のようだ。(本当はどっちも男です。)
本当見た目にそぐわず過激な漫画好きだな。

なんだか無性に腹が立ったので紺がしていたヘッドホンを思いっきり奪い取る。

「ぅわ!!…あれ、日和ちゃんおかえりー」

「そんなところで漫画読むなよ。倒れてるかと思った。」

「悶えてたらベッドから落ちちゃったんだよー。え!?日和ちゃん心配してくれたの!?!?」

「あー!もう!うるさいな!早く食堂行くよ!早くそのエロ本しまって!」

紺の持っている漫画を指差し言うと紺はなにやらニヤニヤし始めた。

「え〜?日和ちゃんこんなのも見れないの〜〜?ほら〜」

「うわ!やめろ近づけんな!…あれ?この女の子のなんで…」

近づけられた漫画の一コマを凝視する。
そこには裸の男に抱えられた裸の女の子。女の子のはずなんだけど…

「ここのモザイク何?」

ついっと女の子の下半身を指差す。

漫画家のミスだろうか。そこだけボヤけていてよく見えない。

「…え?日和ちゃんそれマジで言ってんの?」

真顔で返す紺。よく分からないが恥ずかしいな。

「べっ、別に!早く行くぞ!お腹空いたんだよ!」

「えー…マジかー…」

ドカドカと部屋を出る俺に大人しくついてくる紺。

悪かったな!あんな漫画とか読んだことないんだよ!



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