俺の声は彼のもの | ナノ

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紺side

「あ、こんにちわ。…あれ?無瀬君は?」

今日は第24回委員会会議。いつもだったら小平先輩と成田先輩のイチャイチャが見れるからテンションがあがるんだけど、今の僕はそんな気分じゃない。

放送準備室に入ると平凡健気な成田先輩が迎えてくれる。

「日和ちゃんは…今日休みです…」





体育祭の日、最後の島リレーの時に崖から落ちて保健室へ運ばれた後行方不明になった日和ちゃん。
僕も探しに行きたかったけど、遊洛先輩から日和ちゃんが部屋に帰って来るかもしれないからと言って部屋でじっと待っていた。

1時間待っても2時間待っても日和ちゃんは帰って来なかった。遊洛先輩達からの連絡もない。もう我慢出来なくって部屋から出ようと思った時、部屋のドアが開いた。

良かった。帰ってきてくれた。

その時はそれだけだった。すぐに部屋に入ってしまった日和ちゃんを見送り、遊洛先輩に電話を掛けた。

先輩はすぐに電話に出た。

『っ沢本か、…日和は帰っているか?』

どうやら日和ちゃんは遊洛先輩に会ってから部屋に戻ったらしい。
その割に先輩の声は落ち込んでいた。

「帰ってきましたよ…何かあったんですか?」

普段はゆるい喋り方だけどただならぬ状況に真面目に返す。

先輩が話したのはこういうことだった。

日和ちゃんは事件に巻き込まれているという事。
それが原因で様子がおかしいという事。
気を失っている間の体が恐ろしく冷たかったのでこれから体調を崩し寝込む可能性があるという事。

「確かに様子はおかしかったけど…」

『俺が引き止めても聞かなかったんだ。保健室へ行こうとしたら拒否された。きっと俺じゃ駄目なんだ。日和のそばにいてほしい。』

いつもの飄々とした様子とは違う真面目な、でも縋るような先輩。

「わかり、ました…気を付けてみます。」

『ありがとう。』



次の日のお昼になっても起きて日和ちゃんが起きて来なくって、鍵が掛かってなかったから部屋に入ってみると、ベッドの上で苦しそうに唸る日和ちゃんがいた。
先輩の言った通り、体調を崩したみたいだった。

熱は看病のお陰か3日経てば引いた。その間、土岐くん(優等生髪フェチ)や、小平先輩(受け溺愛不良)、成田先輩(平凡健気)、霧ヶ峰先輩(苦労性健気)がお見舞いに来てくれた。…括弧内は属性だよ。
日和ちゃんは笑顔でありがとうと言って喜んでいたけど、どこか上の空だった。
遊洛先輩と上条委員長はお見舞いには来ることは無かったけど、日和ちゃんのために何かしているのは間違いないんだから。俺は俺にしかできないことをしよう。




「そっか…無瀬くんがいないと寂しいよね。」

「はい…」

学校には来ている日和ちゃんは放課後になるとやることがあると言って最近は一緒にいる時間がものすごく減ってしまっていた。

はぁ、とため息をつきながら自分の席に座り、鞄からBL小説を取り出す。

「あの、先輩…ここ読んでくれませんか?」

「え?…どこどこ…えーっと、『ぁあんっ、やだぁっ!やめてぇっ!そんなとこ弄っちゃやぁ!』………さ…わもとくんっ!…」

真っ赤になった成田先輩…萌え…

「ここ、こ、これっ!えっちな本!?!」

「そ〜ですよ〜、あっ、これなんか小平先輩言ってそう…『足閉じんな…お前の全部俺にくれるって約束したろ…?』」

「わぁぁぁぁっ!!」

更に真っ赤になって必死に僕の口を塞ごうとする成田先輩…萌え…

ていうか、もしかして図星?…なにそれ!ktkr!!!!!

バコンっ

「あいたっ…って小平先輩じゃないですか〜!」

「成田いじめんな…」

「こ、小平ぁぁ、さ、沢本くんが、沢本くんがっ」

小平先輩に泣きつく成田先輩…萌え…

「よしよし…てか俺そんな事言わねぇし」

頭ぽんぽんとかヤブァイ!!!

って!え????
ではどのようなことを?hshs!!!!

「口に出てるぞ…誰が教えるかよ」

「ぐすん」

「え〜〜教えてくださいよ〜〜!!」



遊洛先輩に頼まれたんだ。今、日和ちゃんの事見てあげられるのは俺しかいないんだからっ
いつものように笑っていよう。


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