新緑の初々しい、四月の下旬。
 入学式の頃に、胸を張って咲き誇っていた桜も散り、そろそろ初夏の暑さが到来する季節がやってくる。
 学校生活に慣れ始めた頃には、生徒会選挙が終わり、新生生徒会が結成されていた。
 しかし、学年や学科が違う彼らが一ヶ月ほどで、お互いを許容しあえるような関係になれるわけなどなかった。

 生徒会室の窓に、涼しげな風が吹き抜ける放課後。
 今まさに、今日の生徒会会議が始まろうとしていた。
「議題は、文化祭における生徒会の出し物の件だな」
 そう言って、議題をまとめた用紙を渡したのは、生徒会の顧問である安藤要であった。
 何かを企んでいるような愉悦の眼差しを向けている。まるで、これから起こるであろう波乱を待ち望んでいるかのように。
 用紙を受け取り、なるほどと納得したように深く頷いたのは木野崎秀一だ。
 要綱などの事細かい詳細にざっくりと目を通していると横から一人の女子生徒が視界に映る。
「ステージでの出し物ですよね? 楽しみです!!」
 秀一の持っている用紙に食いつき、楽しげな声を上げたのは、生徒会の紅一点であり、副会長の高科若奈だ。
 ライトブラウンの髪を靡かせて、用紙の内容を覗き込んでいると、幼い少年のような声が耳に飛び込んでくる。
「去年はどんな出し物をしたんですか?」
 興味津々な様子で若奈に問うのは、新一年生で会計担当の筒寺真里である。
 彼は新一年生にして書記の座を射止めた強者で、生徒会のメンバー全員に一目を置かれる存在だ。
「去年は……えーと、何やったんだっけ。りっちゃん」
 若奈にりっちゃんと呼ばれた男子生徒は、長い嘆息を吐きながら、読んでいた小説から視線を上げて、若奈に答える。
 億劫そうな瞳があまりにも冷ややかで、思わず一瞬怯んでしまう。
「生徒会主催、全校生徒参加型の変顔大会だよ。自分で企画しといて忘れるな」
「あれ、そうだっけ? あはは……」
 乾いた笑いを浮かべていると、真里がおもむろに年季の入った古いそろばんを取り出す。
「そういうのなら、低コストで済みそうですね。今後の体育祭などの行事だけでなく、学校の備品の補充など、学校に役に立つような資金を残しておくこともできますね」
「いや、今年はそんなケチケチしたイベントよりも、大々的にド派手に盛大に豪快に、どどどどーんとやるぞ!!」
 机をバンバンと叩きながら、やけに豪華なソファーから立ち上がったのは、生徒会長の結城凪沙だ。
 下ろしていた前髪をコンコルドでアップにすると、気合十分に意気揚々と声を上げる。
「……具体的にはどんなことをやりたいんだ」
 秀一の鋭い眼光が凪沙の方へ向けられると、どことなく気不味い空気が生徒会室に吹き荒れた。
 そんな光景を、他の役員たちが固唾を呑んで見守る中、一頻り唸ったあと、凪沙は突然、ぽんと両手を打った。



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