快楽を呼ぶ悪魔 | ナノ

快楽を呼ぶ悪魔

03


――……


「親父……」


あるマンションの一室で、紳は天を仰いで呟いた。


「シンか」


その瞬間、急に電気が付いているはずの室内が暗くなって、紳の目の前に竜巻のようなものが起こる。
まばたきをした刹那、竜巻の中心部に、人影のようなものが浮かびあがった。





「魔力が、低下しているようだな」


竜巻の中の人影が、不機嫌そうにつぶやく。


「ああ……。人間の姿にならなくても……力が、使えなくなっている」

「ふん。自業自得だ」


人影は、見下したように言いきった。


「懲りたら、早く戻って来い」


ため息交じりに、人影が呟く。


紳は、首を横に振った。


「まだ、帰れない」

「……なんだと?」

「見届けたいものがある。それまでは、帰らない」

「ふざけるな!」


人影が吠えた。
紳は、竜巻の中を睨みつける。


「そのまま下界に居てみろ!お前の魔力は枯れ果てて、人間の体と同化することになるぞ!」


紳が、ぐっと息をのんだ。
もう、そんなところまで魔力が落ちていたのか……。


「下界の時間で、10日だ。10日したら、お前を強制的に連れ帰る」

「10日……」


あまりに、短い。
もっと……あずみの傍にいたい。





「いやだと……言ったら?」

「貴様ごと、人間界を滅ぼす。……いいか。お前は魔界の王となる身だ。本来、10日の猶予も与えぬところだ」

「わかってる……」





と、紳の手の甲に、【10】という文字が浮かび上がる。


「カウントが終わるまでに戻って来い。……最後の譲歩だ」


人影がそこまで言い切ったところで、ぶわっと風が起こり……竜巻が消えた。





「あと……10日」





紳は、自らの手の甲を見つめて呟いた。



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