快楽を呼ぶ悪魔 | ナノ

快楽を呼ぶ悪魔

02


今日のヒロ兄、なんか変だったなー。


「…………み!」


置いてくなよって、どういうことだろ。


「…………ずみっ!」


それになんか、寂しそうだったし……。
笑ってたけど・・・どことなく?


「雪村あずみ!」

「ひゃあっ!」





思考にふけっていると、突然ばんって机が鳴って……。
あ、先生。


「お前、何回呼ばせりゃ気が済むんだよ!!」

「ご、ごめんなさい……」


やばい・・・。
全然、聞いてなかった……。


「ったく。お前、今日放課後数学準備室来い」

「え、えー!?なんでですか?」

「……はあ。あのなあ、」


先生が呆れたような顔をしながら、あたしの耳に唇を寄せた。


「クラスで数学最低点だからだ。……補習」

「うえー……」


呻いた瞬間、先生が、離れる。
最低点って・・・。
クラス40人中、40番ってこと・・・?


……言い訳するわけじゃないけど、最近いろいろあったから……。
普段こんなに悪いわけじゃないよ?
クラスで、35位くらい。





……す、数学だけだから!!
あとの教科は、こんなにひどくないからっ!!





「わかりました……」


ぶーって膨れて、あたしは頷いた。


その瞬間、クラスからキャーって声が聞こえる。


「やだあ。祐さま、あずちゃんには紳くんがいるんですよー?」

「禁断に禁断重ねないでください」

「……あ、でもあずちゃんなら……。すっごい絵になるかも・・・!」


……最近、クラスは「禁断」ブームだ。
・・・もう。みんなして、言いたいこと言って……。


「あほか。静かにしろ」





案の定、先生が一蹴した。











**********


放課後、紳があたしの方に歩いてきた。
それから、苛立ったように顔をしかめる。


「男と二人っきりって……。この上なく危ないシチュエーションだな。……俺も行く」

「ま、まさかあ。先生に限ってないよ!」


紳は、魔力のせいかすっごく頭がいい。
この間の学力テストなんて、オール100点で、学校中の話題になった。
補習一緒に受けるなんて、不自然にもほどがある。


「大丈夫だから、ね?」

「いや。……っ!?」


と、急に紳の体が揺れた。
急に頭を抱え込んで、ふらつく。


「…………っ、!?」

「え、紳?だ、大丈夫?」


紳が頭を押さえて、驚いたような顔をした。
なに?なんなの…?


「おや・・・じ?」


紳が、ぼそって呟いた。
……親父?お父さんのこと?


「紳・・・大丈夫……」


しばらくすると、痛みが治まったのか、紳が体を起こした。
でも・・・軽く唇を噛んで、顔をしかめている。
ど、どっか・・・痛いのかな?


「・・・大丈夫だ」

「本当・・・?……やっぱり、補習はあたし1人で大丈夫だから……」

「……悪い」

「う、うん。早く帰って、おふとん入って……」





そこまで言って、ふと思った。
……そういえば、紳ってどこで寝てるんだろ?
夜いつの間にかいなくなって、朝、いつの間にか家に来てるけど……。





「……いいか。絶対に、マフラーをはずすな。……それでももし、なにかあったら……携帯の【#】を押せ。すぐに、行く」

「う、うん……。大丈夫?」

「お前が心配することじゃない。……気をつけろよ」

「わ、わかった」


こくんと頷いて、席を立つ。
あたしは、一人で数学準備室に向かって歩き出した。





紳、大丈夫かな?








数学準備室……。
確か、3階の、端の教室だったよね?


「・・・雪村、」


3階への階段を上ろうとした瞬間、後ろから先生の声がした。


「ちょい待ち。場所変更だ」

「へ?」


先生が、めんどくさそうに歩いてくる。


「数学準備室の前、女子生徒が待ち伏せしてるらしい。覗くつもりだ」

「えー!?」


みんな、暇だなあ。
覗いて、何が楽しいんだろう・・・?
……そういえば、禁断がどうとか言ってたっけ。


「化学の松村先生に化学準備室借りたから。・・・そっち、行くぞ」

「あ、はあい」








あたしは、先生と化学準備室に向かって歩き出した。



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