快楽を呼ぶ悪魔 | ナノ

快楽を呼ぶ悪魔

08


――……


「ふう、」


一人、部屋でため息をつく。


あのあと。
あたしはあの女の先輩のところに行った。
で、写真を伏せるって約束で、それを先生に公表した。
ことが結構大きいから、そのあとどうなったかはわからないけど……。
それで、少しでも救われる人がいたらいいな。


「・・・あずみ、」

「きゃあああっ・・・んぐっ」





毎度同じパターン。
耳元で急に声がして、あたしは驚きの声をあげた。すぐさま、声の主……紳が、あたしの口元を手でふさぐ。


「お前は……学習しないやつだな」

「・・・ん、し、ふ・・・んーっ!」


反論しようと思ったけど、口元を強く塞がれているから声が出ない。
後ろであたしの口元を押さえる紳は、呆れたような、吹き出しそうな顔であたしを見ている。
……この、やろう。





紳を見ていたら、急に今日の出来事が蘇ってきた。


……そう、いえば。
今日、あたしこいつにキスされたんだっけ。
いろいろあって忘れてたけど……ファーストキス。


なんでそんなことしたんだろ?





「……なんだ?」


あたしが、じっと見ていると・・・紳は不思議そうに口元から手を離した。


「なん、でも・・・ないっ……」


あのときのことを思い出して、あたしは俯いた。
悪魔、だからかな?
紳の緑色の目は、あたしの動きを止める。
吸い込まれそうになって、なんだか泣きたくなる。





「……おい、」


紳から目を逸らしてそんなことを考えていると、紳が口を開いた。


「な、なに?」


紳の目が、あたしの目をとらえる。
……あ、また。……動けない。


紳の顔がゆっくり近づいてくる。
キスされたときと、同じ。
逃げ、なきゃ。
でも・・・この目で見られると、どうしても動けない。


せめてもの抵抗として、あたしはぎゅっと目を瞑った。


紳の唇が、あたしの唇に触れるか触れないかのところで止まる。


…………?


あたしは、ゆっくり目を開けた。
視界は、紳の瞳の色。
エメラルドみたいな、緑色。


「……お前が、繋がりたいと考えているのは……誰だ?」


紳の息が、唇にかかって……。
体が、ぴくんって震えた。





答えなくてもいいのに……。
視界に広がる緑が、あたしの口を割らせる。
この人には……逆らえない。





「ヒロ、兄……。真田比呂……」





ぽつ、ぽつって、あたしは呟くように言った。
言った瞬間、紳の瞳の緑が、揺れる。





「そうか……」


紳が声が出てるか出てないかくらいの声で呟いた。


……紳?


「し……んっ、」





紳の名前を呼ぼうとした瞬間、視界から緑が消えた。
紳の唇が、あたしのを塞ぐ。
そのまま強引に後ろに押し倒されて、あたしは仰向けに床に寝ころぶ形になった。


「んっ・・・し、・・・ふぅっ!」





名前を呼ぼうとした瞬間、紳の舌が咥内に侵入してくる。
押し戻そうとした手は、両腕とも紳に抑え込まれてしまった。


「あ・・・んふ、あっん・・・」


甘い声が、口から洩れる。
紳の舌は、あたしの咥内を這うように動いた。





歯の付け根、裏を、にゅるっとした感触が動く。
咥内でふるえていた舌は、紳の熱い舌によって絡めとられた。


くちゅ、


「ふぁ・・・んっ、」





甘い、キス。
体の力が抜ける。
もとより、抑え込まれた手じゃ、なにもできない。


「あ、ぅ・・・っ」


と、紳の大きな手が、シャツの裾から侵入してくる。
冷たい、手。


その感触に、あたしは大きく震えた。





「あ、・・・めっ!っや、だぁ・・・!!」





驚いて、あたしは身をよじった。
でも、紳の手は、シャツをまくりあげ、膨らんだ胸元に伸びた。


「や・・・やあっ・・・し、んっ!?」





なんで?なんで?
なんで、紳はこんなことするの!?


「や、紳・・・っ!やめ、ひゃうっ!」

「うるさい」





紳は、一言言い放つと、ブラジャーをめくって、胸の突起部分を軽くひっかいた。


「ひゃうっ・・・んっ、」





体がぴくんて跳ねて、口から嬌声がこぼれた。
紳の手が、あたしの体に触れる。
冷たい手が、なでるようにあたしの肌を滑る。


「あ、や・・・紳っ!やめっ・・・!!」





なんで?首輪、紳の理性もとばすの?








って、いうか……。
あたし、この2日間、おかしいよ。
昨日の朝までは、こんな風にびくびくすることもなくて、体に触れられることもなかった。
この2日間、自分でも触れたこともないようなところを掻き回されたり、男の人の性器を咥えさせられたり。


しかも……好きでも、なんでもない人の。





「紳・・・お願い……」


あたしの目から、涙がこぼれた。
いつの間にか行為を中断していた紳が、目を細めて、あたしを見る。


「首輪・・・はずしてよ……」





言った瞬間、紳の目が、悲しそうにあたしを見た。
体に触れていた手が、あたしの涙を拭う。


「……はずせるものなら・・・はずしている」





紳があたしの前髪を払った。
あたしのおでこに、額をぶつけてくる。


「悪かった……」





紳の、一言。
それで、あたしの中の何かが、ぷつんってはずれた。





「謝んないでもいい!はずしてよ!!」



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