進ちゃんは嫉妬深い
新しいクラス、知り合いなんか全然いないかと思ったけど……進之介っちがいたんだぁ♪ わーい、ラッキー!
「進之介っち、今年もよろしくねぇー」
「おせーんだよ、来るのが。年度末に散々協力したのに、また留年するのかと思っただろ?」
進之介っちはぷんぷんと怒りの表情を浮かべている。 えへへ、今年も進之介っちにいろいろ助けてもらおーっと。
なんて、進之介っちが聞いたら怒り出しそうなことを考えているうちに、ちょっとした疑問が頭に浮かんだ。
「進ちゃん・・・? リッちゃんって、進之介っちと仲いいの?」
「進ちゃんは、幼馴染なんです」
「幼馴染ぃ?」
「小学校のときに一回律が転校したから厳密に言うと違うけどな。そういうことだから、律にベタベタ触るなよ」
そう言って、進之介っちはオレを睨みつけた。 は、は〜ん。進之介っちってば、リッちゃんにホの字的なアレなのかねぇ?
「永瀬くん・・・ノートは読まれましたか? 次の授業は数学ですが・・・」
「う、うんー。ちゃんと見たよぅ」
でも、ちょっと・・・じゃなくて、だいぶ難しくてよくわかんなかったのですよぅ。 リッちゃんのノートは、ものすっごーく丁寧で、わかりやすかったんだけどねぇ・・・。オレの頭のほうがまったくついていかないというか……。
「お前、律のノート読んどいて・・・」
「た、たぶん平気! リッちゃんのノート、ちょーわかりやすかったし♪」
進之介っちにじとりと睨まれて、オレはあはは、と力なく笑ってみた。 やばいよぅ。進之介っちってば、リッちゃん絡むとちょー怖い。
「まあまあ進ちゃん、そんな怖い顔しないでよぅ」
「お前が進ちゃんって言うな、アホ」
進之介っち・・・進ちゃんでいっか。進ちゃんで遊んでいると、キンコンカンコンとチャイムの音が鳴った。おぉ、なんか懐かしいなぁ〜。
「予鈴ですね。早速授業ですが、大丈夫ですか・・・? 永瀬くんの席は、わたしの隣になります。こちらですよ」
先導するリッちゃんの後について、教室をてくてくと進む。 わーいっ。このクラス、かわいい女の子多くてうれしいなぁ〜。
「うんっ! がーんばるぞ〜っと♪」
……ど、どうしよっかなぁ・・・。がんばれないぞ〜っと。
「永瀬くん・・・大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないですよぅ……」
黒板に並ぶ数字の羅列に頭がぐちゃぐちゃーってなる。 心配そうに覗き込むリッちゃんにちょこっと笑いかけては見るけど・・・やばい、全然わかんない。
「どこがわからないんですか?」
「全部わかんないぃ。ちちんぷいぷい……」
「……ちんぷんかんぷんでしょうか?」
「ちちぷんかんぷい・・・」
みんなわかりましたね、次進みまーすじゃないよ、先生。わかってない子いるよー。理解できてない子がここにいるよぅ?
「ノートをお渡しして、『はい頑張って』もまずいですよね・・・」
すごいスピードでノートをとりながら、リッちゃんがうーんと考え込む。 こんなときだけど、リッちゃんべっぴんさんだから横顔もちょーキレイだねぇ。
「おい・・・お前、授業ついていけてないんだから、律見てねぇで黒板見ろよ」
「授業わからなすぎて黒板見てても意味ないから、リッちゃんを眺めることでユーイギな時間を過ごそうとしてるんでしょぅ?」
「アホか。とにかく律に構うな、見んな、話しかけんな」
「やっだぁ・・・。男の嫉妬って醜いよぅ、進ちゃん」
「だーから、お前が進ちゃんって言うな!」
オレの席の左隣は、リッちゃん。そんでもって、右隣は進ちゃんだった。幼馴染サンドイッチだねぇー。 進ちゃんってばきっと、今まではリッちゃんの顔見放題だったのに、オレが来たことでリッちゃんが見づらくなっちゃったからイライラしてるんだよぅ。お子様だよねー。
「……永瀬くん、今日放課後はお暇ですか?」
「ほへ?」
「……律?」
進ちゃんとぼそぼそ話しこんでいると、ふいにリッちゃんが口を開いた。 途端に逆隣の進ちゃんが目を見開く。
「ホーカゴ? 今日はお暇だよん」
「それなら・・・ちょっと付き合っていただけませんか?」
「ほわぁ〜。リッちゃんからのお誘い? 付き合う付き合う〜♪」
「り、律!? 永瀬、てめー律誑かしてんじゃねーっ!!」
返事をした瞬間、進ちゃんは蒼白になってオレに飛び掛ってきた。 そのままぐいっとオレの胸倉を掴んで、ぐわんぐわんと揺らし始める。
「やーらぁ〜、進ちゃんってば嫉妬深いぃー!」
「遠山くん、永瀬くん! 何を授業中にギャーギャー騒いでいるの。静かになさい!」
先生の激昂がオレと進ちゃんの言い合いに水を差す。 にゃー。女の子は好きだし女教師とかエロくて大好きだけど、怒られるのは好きくないー。
オレの胸倉から手を離した進ちゃんは、涙目でリッちゃんを見た。リッちゃんはたぶんいまいちわかっていないんだろう。きょとんとした目で進ちゃんを見返す。
ともかくともかく! 今日ガッコ頑張ったら、リッちゃんとデートだ♪
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