(Red)
※仁菜視点、ちょっと未来 微エロ?
ギシギシと、ベッドが音を立てる。 ベッドが揺れてるんだか、わたしが揺れてるんだか、よくわからない。
「あっ、あぁ」
自分の甘ったるい声が、すっごく恥ずかしい。 でも、禅さんはそんなわたしを見て、にこりと笑う。
「イく?」
「い、く・・・も、イくっ・・・」
ガツンと奥を突かれて、わたしはからだを痙攣させて絶頂を迎えた。そして、それと同時に意識も失った。
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「ん、っ・・・」
「……起きた?」
どれくらい、気を失っていたんだろう。 ゆっくり目を開けると、うっすらと微笑む禅さんの姿。 それから・・・腕枕・・・されてる?
慣れって本当に怖いなと思う。そもそも、抱きつぶされてからだも動かないし……。 わたしは、なんとなく現状を受け入れながら、ふっと目を閉じた。
「あり? 寝ちゃうの?」
「寝ません、けど・・・」
「ピロートークしないの?」
「……、む」
からだを揺さぶられて、わたしはゆっくり目を開けた。 目を開いた先で、禅さんがにこりと笑う。 ……カッコよくて・・・憎めないから。顔を見ると、恥ずかしくて仕方なくなるから。 だから、目を閉じたのに……。
「赤、」
「んー?」
「目、赤いです」
にこにこ笑う禅さんになにか言わなきゃって気になって、わたしはついつい瞳の色を口にした。 すると、禅さんは「あー」と瞳を動かす。
「目立つよねー」
「はい」
「仁菜チャンに見つけてもらえるなら、ラッキーだーね」
「そ、そうですか・・・?」
「そうだよー」
禅さんが、わたしの目の周りにすーっと指を這わす。 その冷たい感触に、わたしは思わず目を閉じた。
「仁菜チャンは、赤って嫌い?」
「っ、ふぇ?」
「赤。好き? 嫌い?」
それから、禅さんは急にこんなことを言い出した。 赤、か。……赤。
「す・・・」
「す?」
「好き・・・です」
「……そお?」
今しているのは、赤色の話! 禅さんのことじゃない! なのに、わたしは顔が赤くなるのが分かった。 もう、やだ!
くすりと笑った禅さんは、わたしの頬を撫でて、「俺も好きかも」と言った。 恥ずかしくて目を閉じたままだったから、禅さんの表情はわからないけれど・・・。
「……あ、そうだ」
と。 禅さんが、わたしから離れるのが分かる。 薄目を開けて禅さんの様子を見ると、禅さんは手元の棚をごそごそといじっていた。
「じゃーん」
「……?」
そして、棚から細長く、四角いものを取り出した。 ええと・・・これは、口紅かな・・・?
「赤い口紅だーよ。赤でおそろいにしようー?」
「え、え・・・? あの……なんで、」
口紅のキャップを開ける禅さんに、疑問が湧き上がる。 なんで・・・? なんで、口紅なんか……。
「なんで、とは?」
「な、なんで口紅持ってるんですか?」
「……?」
「『?』じゃなくて・・・! お、女の人の化粧道具ですよね!?」
「……あぁ。……なに? 気になる?」
「き、・・・になりま、せん」
「そ?」
禅さんは、どことなくうれしそうにくすくすと笑った。 わたしも、自分がなんでこんなことを気にしているのか分からなくて、「気にしていない」とウソをついてその話題を終わらせようとする。 ……誰か、女の人が置いていったの、かな? …………なんか・・・胸がモヤッとする。
「ちょっとごめんねー」
「んっ・・・」
変な気持ちを抱えていると、禅さんが口紅を持ってわたしに近づいてきた。 そして、赤い口紅をぐりぐりとわたしの唇に塗りたくる。
「んん、んーっ」
「あり? ちょっとはみ出しちゃった」
そりゃあ、そんな塗りかたしたらはみ出すよ! お母さん、リップブラシみたいなので塗ってるの見るし……。
そんなことを考えていたら、いつの間にか禅さんの顔がわたしのすぐそばまで来ていた。 「わむっ」とか変な声をあげるわたしを放って、禅さんは赤い舌をぺろりと出す。
「ふ、っ!?」
「…………、」
禅さんの舌が、わたしの唇の輪郭をなぞり上げた。 一周、二周・・・そして、唇を食む。 驚いていると、禅さんはぷちゅっという音を立てながら、唇を離した。
「っ、は・・・」
「あはっ。きれいにできたー」
驚くわたしを尻目に、禅さんはわたしの顔の前に手鏡を持ってきた。 そして、「ね?」と首をかしげる。 わたしの唇は、いつもと違う色……血みたいなルージュに染まっていた。
「やっぱり似合うー」
「そ、うですか・・・?」
「うんうん。俺の思った通り!」
「……ぜ、禅さん!」
「んー?」
満足そうな禅さんに視線を投げると、そこにいたのは同じく唇を赤く染めた禅さん。 なんか・・・雰囲気が、よりアダルティーに・・・!
「唇、赤いです」
「ほんとー? おそろいだね」
「おそろい?」
「うん。ちゅーしたからね」
ふふっと笑った禅さんは、そう言いながらわたしの唇に、ついばむようなキスを落としてくる。 何度も何度も繰り返されるそれに、わたしは体の芯がうずくのを感じてしまった。
「もっかい、シよっか」
自覚した瞬間、わたしの心情が全部分かっているみたいに耳元でささやかれて……もう、逃げられない。 ――わたしは、ぎゅっと目を閉じた。
(本当はね、仁菜チャンに似合うかなーって買ってきたんだ。でも、無自覚でも嫉妬してるのがかわいくて……いじわる、しちゃった)
*** 禅は、当サイトでも異色の変態だと思います。 だって買わないよ、赤い口紅。 でも、彼を書くのは好きです! けっこう、なにをしても許されるキャラクターなので。
時系列的には、本編より未来のお話です。 仁菜が、禅に絆されてきてる頃ですね(;´∀`)笑
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