「例えばね、そこら辺に居る動物でね猫とかはさ、縄張りを持ってるじゃん」

「ああ」

「それがさ、もしアニメにでてくる奴みたいに英知を手にしたらどうなると思う?」

「例えば」

「二足歩行したり、暗算したり、人間みたいに振る舞うの」

「それが縄張り争いをしたら、?」

「うん、どうなると思う?」

「空き地は荒野になるだろうな」

「それくらいなら可愛いもんだと思うけどねー」

「…唐突になんだ」

「いや、過ぎたもんは持つもんじゃないなあと思って」



言葉を持つから知恵がつき

知恵を持つから欲ができ

欲を持つから力を欲し

力を求めて武器を生み

武器を使って血を流す



「子供みたいに、獣みたいに、その身ひとつで取っ組み合いだけしてれば、怪我で済む人もいたかもしれないのにね」

「…お前は人類のどのあたりから否定するつもりなんだ」

「そんな、そこにだけ傾倒するつもりじゃないよ」


知恵が無ければ失われなかった命があったかもしれない、でも医学が代表するように、知恵が無ければ救えなかった命があるのもまた、事実だ。


だから力がどう、とか知恵がどう、とかじゃなくてね、


知恵が知識になり技術になり、そして生み出された情報媒体は、人づてに情報を集めていたあれと比べるまでもない程に、簡単に膨大な量の情報を集めてくる

そうしてふ、と考えたのだ



「旦那は何のために武器を取ったの?」

「お館様と甲斐の人間のためであった」

「ほかは?」

「何がいいたいのだ」

「世界地図のさ、日本ってすごく小さいじゃん」

「ああ」

「その中の甲斐、ってさ、正直点くらいの大きさじゃない」

「…」

「俺達はえらく小さい島国で、あちこちに血を撒き散らしたんだなあと思うと、えらく傲慢だったなあと思って」




軽く押せば、倒れてそのまま事切れそうなくらいに飢えた人間がいたかと思えば、軽く押したくらいじゃびくともしない、むしろ自分で動くことも難しいくらい太った人もいる。

今になって、どこでも見渡せる情報媒体が発達してなければ知りえない、海の外の話だ。

そんなことも知らないで、あの狭い世界の中で、俺達のしていたことは本当に"世のため人のため"だったのだろうか


「それを、あの時代の大義を、今の価値観を踏まえて考えることに意味はあるのか」


そう、いつどれだけ考えたって行き着くのはそこ

「実はぜーんぜん。ただの烏滸な話だよ。」


この時代の価値観を培ってしまった俺達に、あの時の是非を問う術は既に存在しない

結局はこれからをどうするか、なのだ






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