戦国(政佐)
2011/10/09 18:46
「嘘、だろう」
「ほんとだよ」
嘘だ。誰が信じるというのだそんなこと。宿命の仲と定めた男が、死んだ。まだ志半ば、両の手指程しか刃を交えたことはなかったのに。
目の前にいる男の言っている言葉は日本語か?新手の南蛮語かなんかじゃないのか?だからきっと、目の前の男の言葉の意味が分からないのだ。いつも飄々とした体の男が、今日に限ってそれを見せないのは、きっとその嘘に磨きをかけるためだ。そうだ。きっと。
(なあ、だから)
「嘘って言えよ」
「聞き分けてくれよ」
やけにひぐらしの声が耳に残る、夏の終わりの頃だった。盆も過ぎたというのに、城には妙な空気が在って、やけに鴉がかまびすしいと政宗は思った。
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真田の死んだ後のふたり
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