転成パロ(慶佐)
2011/10/09 18:44
「みぃーつっけた!」
「…」
「あんたが犯人だったんだね」
日も暮れかかった寂れた公園だった。
かつては、団地にある公園として多くの子供で賑わっていた場所であるが、少子化の影響か今は全くその面影を持たない。劣化を始めた遊具と、変わらない営みを続ける草木が、思い出を風化させようとしている。
「俺に何の用?教育学部の前田くん」
「まあそう怒んなよ。法学部の猿飛くん」
「やめてよ。あんたに苗字呼ばわりされると歯が浮く」
「ひっでーの!」
腹の探り合いの始まりそうな会話であり、何の気もない日常会話のようでもあった。
どちらにせよ、着の身着のままで散歩がてら、といった態(てい)の慶次と、呻きながら横たわる数人の中に立っている佐助の会話である。ひどく場違いで、些か信じ難い。
「あーあー派手にやっちゃって」
「つうか、なんでここが分かったの?ばれないように頑張ってたのに」
「俺も頑張ってみたの。で、カレンダーみて分かったの。」
「……カレンダー?」
「そう!佐助明日発つんでしょ?」
「そうだよ」
「つまりね、"放火犯は必ず現場に帰ってくる"ってこと」
「……動物的勘?」
「違うよ、心理的考察」
「…くだらない」
そう言った佐助が後ろ髪を掻きあげる。それを見た慶次は確信めいた顔で笑った。
陽射しは弱く、それでいて空を一色に染める暮れかけの日の色は、佐助の髪のそれによく似ている。
その周りに倒れているのは茶やら金やら赤やらと、がちゃがちゃ賑やかな髪を持つ人間だった。
「逆お礼参り?」
「そうだよ。ほんと身の程を知ってから来いよって感じ」
「もてもてだね」
「言ってろよ」
佐助は、つまらなそうに転がっている人間を見下ろして、そうして、見下したように言った。
そういえば小さい時から佐助は退屈そうだった。聞けば、昔のことをそっくりそのまま覚えているらしい。
そういうことがあった、くらいにしか記憶がない俺には分からない。だけど、鮮明というレベルが価値観まで、ということなら、確かに発達最中の人間と付き合うのはつまらないのかもしれない。
元親とかなら楽しくやるだろう。でも佐助は、世話焼きだが面倒見がいい、というわけではないらしい。
「どうして仲良くできないかなあ」
「あんまり相手の精神年齢が幼いとつまんないじゃん」
「400歳の佐助と気の合う奴って、逆に誰…?」
「そういう意味じゃないよ」
敢えて逆撫でするように言ったら、佐助が少し赤くなっている拳を握りなおした。どうやら思った以上に虫の居所が悪いらしい。
樹齢何百年の樹に親近感は湧くんだろうか、と考えて聞こうと思っていた慶次は、慌てて予定を変更した。
「あんたみたいに、こっちで興味の沸くものがなかっただけ」
願書を出すくらいの頃だったろうか、その時も佐助は同じようなことを言っていた。もったいない。
「そうやってさ、逃げてんじゃない?」
「どうしてさ」
**
ふたつ前のと同じお題を意識してリベンジに挑んだ結果、連敗というね
慶次と絡ませると佐助が不機嫌になる不思議
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