toriko夢 | ナノ

 ゼブラさんお願いします!

会社で仕事を干されてから、アシストにつかされることが多くなった。

それも普通の取材や撮影のアシストではない。

例えば、伝説の食材をカメラに収めるために無断で危険地域に踏む込むような――そんな危険な撮影班のアシストである。

ちなみに、この撮影は普通のジャーナリズムなど持ち合わせていない。

極内密に違法侵入し、撮影したものを“某美食屋の提供”という名目で打ち出す、犯罪に近いものだ。

とてもリスクが高い。

うっかりIGOに見つかれば処罰ものだし、撮影者の命は保証されない。

ただ、この記事に関する読者の反応はとても良い。

皆、この眼にしたことのない食材の生きた姿に興味があるのだ。


――食! 食! 食!


金は天下の回りものというが、その金を回しているのが、他ならぬ“食”なのである。


今回、私はその撮影班のアシストで比較的安全な『待機スタッフ』として参加した。

危険地域に入らず、その近くにある村で会社と撮影班の連絡を取り持つ役目だ。

何かあれば即座に上層部へ連絡をする。

そして撤退、待機の指示を待つのだ。


ちなみに、この指示に“救助”の選択はない。


それ意味するところは。

つまり。




* * * * * * *




「……待機班も、“救助”は適応されないのかな」


――ごつごつした地面の上で目が覚めた瞬間、私は虚ろに呟いた。


耳に入るのは、私の上に覆いかぶさっている荷車の車輪がカラカラと空しく響くと、激しく吹きすさぶ荒野の風の音。

鼻につくのは、獣の血生臭い残り香り。

よくもまぁ、生き残ったもんだ。

私は狭い空間でぐるりと体を捻る。運が良いことに、私に覆いかぶさっている荷車は、どこも私の体を押さえつけてはいなかった。

私以外は全員投げ出されたんだな。

同乗していた数人の旅先案内人の胡散臭い顔を思い出す。


――実は数刻前。

待機予定の村へ移動する途中、私たちは荷車ごと隔離指定生物に襲われたのである。

確かあれは、ずいぶん前の戦争で使用された生物兵器だった。

紛争地域はこことまるで違うが、なんらかの理由で移動してきたのだろう。

土の中から突然沸いて出たその生物は、荷車をひっくり返し、傍若無人の限りを尽くしたのだ。

ぁあ、耳にはびこる悲鳴を忘れてしまいたい。


――私は重苦しい思いを抱きながら、ズルズルと這うようにして、荷車から外へ脱出する。

ビュウッと強い風が私の髪の毛を巻き上げ、砂埃が露出している肌に当たって痛い。

「……あ、やばい」

外の光景に目を凝らした私だが――視界が完全にぼやけ、歪んでいる。驚くほど何も見えない。

かろうじて見えるのは、荒野の黄色と、空のくすんだ水色との境界線だ。

そして、あちらこちらに散らばる、茶色の塊。

恐らく、この荷車の残骸と……あぁ、見えない方が良いようなものの残骸だろう。

吐きそう。

急にのどの奥がぎゅうっと締まっていく感じがした。

多分、色んな所を強打しているせいもあるし、この現状に頭も胃も耐えきれてそうにないのだろう。

しかし、私は必死で口を閉じて空を仰ぎ、せり上がってくるものを飲み込む。

死にたくない。

当たり前だが、死にたくない。

だが、どうすればいいのだろう。

この視界で広い荒野を、あてもなく彷徨うってか?

なんとか吐き気を飲み込んだ私は、地面に尻をつき、横転した荷車にもたれかかるようにして座る。

その時、手がじんわりと湿った感じがした。

目を凝らしてその先を見つめてみると、荷車の下敷きになった水筒が見事に破裂してる。

水がないこの状態は不運? それとも、自分がこうならなかっただけ幸運なんだろうか?

そんなことを思いながら、私は泣きそうになるのを我慢した。


我慢した。

そう我慢した。


だけど、数時間後にはもう無理で。


「やだぁー! 死にたくなぃい! 助けてぇ!」


号泣と共に大絶叫。

これが命とりになるってことは知っているけれど、元々じらしプレイが苦手な私は、もういっぱいっぱいだった。

そう。

もう。

いっぱいいっぱいです!



* * * * * * * *



――結局、あれからどれだけ待っても、助けはこなかった。

飢えと渇きと、視界の不全に限界を超えた私は、今朝、狂乱した。

めちゃくちゃに吠えて暴れ、そしてついにバッタリと地面に倒れてしまった。


まさに最期の生き物の行動だ。

すでに今は何をする気力もない。

踏み入れたくない世界は、すぐそこに見えていた。



……そんな中、遠く、遠くに歌が聞こえる。

ひどく掠れたその歌は、けっして誰の耳にも届かない。

なのに、何故、私の耳には聞こえるんだろう。


ああそうか。

私か。

私が歌っているのか。


悲しいかな。

私が最後に口ずさむのは、食べ物の歌だ。

“食”しか興味を持たれないこの時代は、歌も芸術も“食”が関係していないと話にならない。

だけど私はひっそりとそんなマイナーな“歌”というカテゴリに興味があった。

こんなことが頭を回るのは、きっと「これが最後だ」と自分が悟り始めたからだろう。

……一度でいいから“純粋な歌”というものを歌ってみたかったな……。

そう思いながら、私はついに薄ぼんやり開いていた口を閉じる。

カラカラに乾いているはずの私の目から、涙の滴が一粒だけ落ちた。



「おい」

「…………」

「おい!」

「…………っ?」

意識が沈みかけていたはずの私の頭上に、やたら体に響く重低音が聞こえる。

「聞こえねぇのか!」

「……?……?」

「っち……」

「……っ」

力を振り絞って瞼を上げ、歪んだ視界を必死に凝らす。

するとそこにはぼんやりと赤茶色の巨大な塊が見えた。

どうやらこの塊が私に話しかけているようだ。

え。なにこれ?

こう言う時のお迎えって白とか金色とかの小さくてフワフワした天使様とかじゃないの?

じゃないとすると、もしかして。

「……死、神……?」

「……じゃあ、テメェは死人か?」

「…………生き、て……ます、けど」

私は赤茶の塊に対してとりあえず首を傾げてみる。

ちなみにこれ以上は動けないし、声も出せない。

すると赤茶の塊は苛立ちを含んだ溜息をつき、ごそごそと動き出した。

とぷっ、という水のような音がする。

「…………っ?」

すると突然、赤茶の塊は私の唇に、濡れた布のようなものを押し付けてきた。

うわ、なんだこれ。

冷たい……水?

……んん!?

でも、なんかシュワッってすんぞ!?

突然に刺激に私は顔をしかめ、唇を真一文字閉じた。

「おい、口を閉じんじゃねぇ!」

「…………!」

だが、赤茶の塊の怒号がとても恐ろしかったので、私は慌てて口を開く。

押し付けられた布から染み出すシュワシュワの液体が、じわじわと私の口内に入っていった。

乾き切った唇や、かさかさの口の中にとってそれは刺激的すぎて痛い。

だけど、久々の水分に体は素直に喜びを感じる。

それに、痛いけど死ぬほど美味しい……っ!

あぁ、喉が焼けそうなほどに甘いのに、この爽快感はあり得ない。

気が付けば、私はその布を口に含みチュウチュウと赤子のように吸っていた。

そしてその布がすっかり水分を失くすと、赤茶の塊は無言のまま、また濡らしたものを口に運んでくれる。

――私は満足して気絶するまで、その布をただひたすらに吸い続けた。




* * * * * * * *




「どこの、どなたか存じませぬが……ありがとうございます」

私は赤茶さんを見下ろしながら礼を述べる。

何故見下ろしているのかというと、私が現在居る場所が赤茶さんの体の上だからだ。

多分きっと、背中とか肩とかその辺りだと思う。

今だに視力が回復していないせいか、どうも自分の居るポジションがはっきりしない。

そもそも、赤茶さんの本体がどこなのかさえ掴めていなかったりする。

もしかすると、この真横にある何かが赤茶さんの顔かもしれないのだが、喋ってくれないので解らなかった。

ただ、この赤茶さんが水分補給をさせてくれたおかげで意識と声はずいぶんとハッキリしている。

「いやー、すいません……私、今視界が悪くて……変な所向いて喋っていても気にしないで下さいね」

視界を上に向けたり下に向けりしながら私は喋った。

だけどもやっぱり赤茶さんは返事をしてくれない。

……はっ!

もしかしてこの赤茶さんって、人外!?

言葉を喋っていたと思ってうけど、朦朧とした私の妄想だったりして!

「も、もしかして、私を巣に連れて帰るとか!?」

「くだらねぇこと考えじゃねぇ」

「……あ、すんません」

なんだ、やっぱり人じゃないか。驚かさないで欲しいね、まったく。

っていうか、今真横から声が聞こえたよね。

ああ、じゃあ赤茶さんの顔はやっぱりこの横にあるぼんやりした物体か。

うん。そう思うと顔のように見えてきた気がする。

「いやー、なんか、ホントもう死ぬかと思いました。あのタイミングは天の助けかと……」

「うるせぇ」

「おっと失礼」

声が大きかったろうか?

いくら回復したとはいえ、張りのある声とは言えないはずなんだけどなぁ。

ああ、でもなんせ真横に顔があるんだから、耳に近ければ大きく聞こえちゃうか。

そう思った私は、今度は極小さな声で喋った。

「でも、あの飲み物、びっくりするくらい美味しかったです。なんですか、あれ? 多分あんな危機的状況じゃなくても、絶対美味しいですよね。意識朦朧としてたんですけど、確か炭酸入ってましたっけ?いやぁ、初めは口の中がピリピリして痛かったんですけど、その後の美味しさに驚いちゃいましたよぉ。あれなんていう飲み物なんです?多分私、あんなの飲んだこといなぁ……。しっかし、なんなんですかねぇ、この荒野。どこまで続くんだろう。雨も全く降らないから、私あの時は脱水状態でしたよ。あとなんでかわからないんですけど視界が歪んで仕方ないんですよねぇ、多分頭でも打ったのかもしれません。これ治ってくれないと困るなぁ、ライフあたりに行けば治りますかね?あ、そうそう、さっきからお名前を聞いてませんでしたね。私はワカメというんですけど……」


「うるせぇぇえええぇえ――――ぇ!!!」


突然、赤茶さんが吠えた。

それも私に向かってだ。

赤茶さんの重低音は、ありえないほどに私の体を揺らす。耳の鼓膜だって、今にも破けそうだ。

「少し黙ってろ!」

「……はぁ」

赤茶さんはその巨体に似合わず大変神経質なようだ。

あんな囁くような声で喋っていたのにうるさいだなんて。

私はじんじんする耳を押さえながら、首を捻った。

でも、ずっと囁き声で喋られるもの、確かにうっとおしいか。

悪いことしたな。

「すいません……あの、じゃあ、少しだけでもいいのでお話しましょうよ? そしたら黙りますんで」

「あぁ!? なんで俺がそんなこと」

「いいじゃありませんか!せっかく助けていただいたんですから、お礼ぐらい言わせ下さい」

「別に、礼なんざいらねぇ」

「……そうですか」

私はどうしたものかと思う。

だけども私はこの赤茶さんとどうしてもお話しがしてみたかった。

「あの……」

だから懲りない。

でも、これで次に『黙れ』と言われたら大人しく黙っておこう。

私は勝手にそんなルールを作って話かけた。

「私を乗せて重くないですか?」

「……テメェくらい無いも同然だ」

「あ、それ嬉しい一言だ。心のメモにメモっとこ」

私は冗談めいて小さく笑う。

しかし赤茶さんは完全に無反応だった。

「……貴方はとても大きいですよね? 私、今目が悪いんですけど、それだけはわかります」

「テメェはチビだな」

「そりゃあ、貴方に比べれば。そういえば、私、最近は大きい人ばかりに出会ってます……美食屋四天王とか」

「あぁ?」

赤茶さんがピクリと反応した。多分、四天王という単語に対してだ。

「あ、でも私が出会ったことがあるのは、四天王の中でもトリコとココとサニーの3人だけですよ」

「……そうか、あいつらにな」

「…………? ええ、私、これでも記者なので。あと出逢っていないのは――ゼブラだけですね」

私がその名を出すと、赤茶さんがハッ、と鼻で笑ったのが解った。

あまり感じの良くないその笑いに、私は首をひねる。

「でも“ゼブラ注意報”だなんて……すごいですよね。そんなに怖い人なんですかね」

「さぁな」

「まぁ、私も写真しか見たことがないですけど、外見は確かに厳ついと思ったなぁ」

「…………会ってみてぇか?」

「……え?」

赤茶さんのほうから質問が返ってくると思っていなかった私は、驚きの声が出た。

いったい、どういう風の吹きまわしなのだろう。

もし、お喋りが楽しくなってきてくれたのなら嬉しいのだけれど……先程から感じる赤茶さんの含み笑いはどこか刺々しい。

「えーと……」

とりあえず私は、唇に手を当てて考えてみる。

四天王ゼブラ、か。

そうだなぁ。

ぶっちゃけ怖そうだなぁ……悪い噂も山ほどあるし、実際捕まってい経歴もある男だ。

ただ、不思議なことに支持している層も多いのも事実で……。

「何悩んでんだ」

「……難しいこと聞くなぁと思って」

「だろうな。いくら記者でも、死にたくねぇだろうしな」

赤茶さんがまた鼻で笑う。

「………いえ、なんというか」

私は今だになんと答えればいいのか解らず、ぼやけた視界で赤茶さんを見つめた。でも、やっぱりよく見えない。


あぁ、そうか。

同時に一番しっくりする答えを見出した私は、ポンッと手を叩いた。

そんな私に対して赤茶さんは「あ?」と凄むような声を出す。

しかし、思いつきを口にしたくて堪らない私は、そんなこと気にもしない。

「――もし、四天王ゼブラが貴方みたいな人だったら、ぜひとも会いたいです!」

「……あぁ!?」

赤茶さんが怒りか驚きか解らないような、素っ頓狂な声を上げた。

「何言ってんだテメェ……!」

「何って、そのままですけど……」

私は赤茶さんの過剰反応に驚きつつも、思ったことをそのまま言葉にして紡ぎ続けた。

「だって、もしゼブラが本当に貴方みたいな人だったら……私は絶対にゼブラのこと好きになりますよ!」

赤茶さんみたいなゼブラだったらきっと怖くない。むしろ好感度UPだ。

「まぁ、ようは会ってみない限り、解らないってことです」

私はなんだか可笑しくなって笑ってしまった。

しかし、そんな私に反して赤茶さんは黙ったきりだ。

なんの反応も返ってこない。

「……どうしました?」

「…………」

「あのぉ、赤茶さ……」

赤茶さんと言いかけて私は慌てて口を閉じた。

あぁ、そう言えば、この人の名前を聞いてなかったっけ。

「すいません、今更なんですけど、お名前を……」

「……るせぇ」

「はい?」

「……うるせぇ! ちったぁ黙ってろ!」

「は、はい!」

落雷のような怒声に私はビクリとする。

眩暈がしそうなその大声は、先程聞いたものより、よっぽど真剣味が籠っていた。

え。

私、そんなに怒ること言ったっけ……?

ちょっとショック……。


仕方がないので、私は今度こそ黙ることにした。

すっかり2人の間には重苦しい沈黙が落ちる。

時折聞こえるのは、風が草を転がす音だけだ。


だけど、そうやってずっと黙っているうちに――強烈な眠気が私を襲った。

ただですら体力を消耗してしまっているし、視界が悪いと瞼が重くなって仕方ないのだ。

「…………」

ちらりと赤茶さんの顔だと思われる方を見てみるが、やっぱり彼は喋る気配が無い。

むしろまだ何か怒っているような気配すらする。

おかけで彼が何者かさっぱり解らない。


――けれど何故だろう。

この人はとても安心する。

助けてくれたから?

案外優しいから?

だってほら、いつまで私を乗せて歩いてくれるつもりなんだろう。


うーん。

……とりあえず、眠い。


私は少しだけ体の力を抜いて目を閉じた。

黙ってから一時間も経たないうちに、私はすっかり眠りの世界へと落ちていってしまった。




* * * * * * * *





――次に私が目覚めたのは、待機する予定だった村の宿泊所だった。

ぼけていた視界は、少しクリアになっていた。

慌てて飛び起き、キョロキョロと当たりを見回す。

どうやら赤茶さんの姿も気配も無い所を見ると、私はここに置いていかれたらしい。

なんとなく、そんな予感がしていた私はあまり驚かなかった。


だけど本当に黙って去るなんて……。

結局なにも彼のことを聞けなかったな……。

私の胸に後悔が宿る。

彼について解っているのは……『大きくて、赤茶色で、重低音のちょっと素敵な声をしている――優しくて、素直じゃない人』……そんなことぐらいだ。

私は自分の心にぼんやりしたまんまの赤茶さんの顔を思い浮かべた。

しかし歪んだ視界では、彼の正確な姿を捉えていることはなかった。


「はぁ……」

簡素なベット上でボケーッと溜息をついていると、私が起きた気配に気が付いた宿泊所の主人が部屋の扉をノックした。

私は慌てて主人に入室してもらう。

入室してきた主人は、何故かひどく小刻みに震えていた。

「め、目覚めましたか? あ、あのお連れさんは、その、貴女をここに運んでから、す、すぐに出ていきましたよ」

「そうですか……あ、あの! その人のことなんですけど……!」


これが唯一の手掛かりになると思った私は、宿泊所の主人に食い付く。

すると主人は、ひっ!と短い悲鳴を上げた。

……悲鳴?


「だ、大丈夫です、言いませんよ、言いませんともー! 貴女を連れてきたのが、“ゼブラ”だなんて! 絶対に、言いませんよ!」


その瞬間。

雷のようなものがこの建物の隙間を這い潜り、店の主人にピンポイントで落ちた。

主人の悲鳴が響き渡る。


――確か……四天王ゼブラって地獄耳だっけ。

んでもって、雷みたいな声してるんだっけ。

いつしか読んだ週刊誌の記事を思い出す。


私は混乱する頭を高速で、整理させて、主人に話しかけた。

目の前の主人は所々ぷすぷすと焦げているが、とにかく大丈夫なようだ。

「すいません、色々連絡したいことがあるんで、通信機を借りてもいいですか?」

コクコクと頷く主人に私は苦笑いで会釈を返す。


――とりあえず、撮影班と会社に連絡を取らないと。

あぁ、大事になってないといいな。


そう思いながら、私は取りあえず大きく息を吸い込んだ。

そして、

「ゼブラさーん! ありがとうございます! やっぱり私、ゼブラさんのこと好きになりましたよー!」

と、叫んでみる。

聞こえているだろうか?

あの主人の声が聞こえたんだから、聞こえているだろうなぁ……。

そう思うと、なんだかくすぐったい気持になる。


――返事がないので、私はもう一言叫んでみることにした。


「今回のこと記事にしていいですかー!」


私は本気だった。

返事がなきゃ書いてやろうとさえ思っていた。



しかし、次の瞬間。


“調子にのってんじゃねぇぇえぇ!”


――そんな爆撃のような声が私の鼓膜を震わせた。



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