◎歪んだ純愛 13
『身体の遺骨だ』
瓶を受け取り、蓋を開けるとまっさらな骨が顔を出した。
「フフ…新羅のやつ、研究材料にでもするのかと思ってたよ」
薄く笑って返事をすると、セルティが核心に迫ってきた。
『…方法は、やはり見つからなかったんだな』
「ああ、全て尽くしたけど、無理だった。…このメモに書いてある場所に俺の残りの財産を預けてある。調査で大分と削られたけど、ないよりはマシだろ?」
力ない笑顔をセルティに向け、メモを手渡した。
『金なんかいらない!』
「金のほかにもあるんだ。君が欲しい情報とかもね」
セルティが首を傾げた瞬間、新羅がキッチンから出てきた。
「どうせ食べてないでしょ、プリンあるけど」
「…いらない。食べなさ過ぎで胃が受け付けそうにないし」
「それでも食べて」
新羅は座るよう強く言ってきては臨也の肩を押した。
スプーンと市販で売っているような安そうなプリンを手に取らされ、二人はじっと臨也を見ている。
「…判ったよ。シズちゃんも、このプリン良く食べてたよね、高校の時からさ」
口に含むと、久しぶりの糖分が身体に染み渡っていくようだった。
こんなにも美味しかっただろうか、一気に平らげてしまう。
「…まぁ、悪くないね」
思わず笑みを浮かべた。
セルティは首を大事そうに抱えて来て、臨也の前に差し出した。
落ち着いた様子でスプーンとカップをテーブルに置くと、丁寧に両手で受け取った。
「シズちゃん」
預けた時より血色が悪くなっていることを、セルティは息の詰まる想いでPDAに指を走らせた。
『もう、永くない。すまない。すまない』
「…良いんだ。有難う」
『私達も待っている間、出来る限り調べた。でも最善なんてなくて。それに静雄はもう、望んでいないと、感じてしまったんだ…』
「…。うん」
臨也は首と向き直ると、相変わらず目を閉じた状態の静雄を微笑ましく眺めた。
「じゃあ、俺は行くよ」
腰を上げると、新羅が勢い良く立ち上がった。
「心中なんてしないでよね、したら許さないから」
「はぁ?俺が自殺なんてするタイプだとでも?」
「絶対だからね」
臨也はその願いに、ただ微笑むだけだった。
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