歪んだ純愛12 | ナノ


歪んだ純愛 12
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夕焼けのオレンジが色濃く臨也を照らしている。

「ちくしょう」

資料の山、足元には機械だらけ、臨也本人の体力も極限に落ちていた。
どれくらい時間が経ったか覚えていない。
臨也はもう、静雄の事しか考えていない。

人間の事を考えない時間が何日も過ぎているのは、この折原臨也にとってまさに奇跡だ。

もう、それがどういうことか、臨也自身が痛いほど理解している。


「ちゃんと言ってないんだ」

ただ、一言、伝えたかっただけなのに。

「クソ…クソ…ッ」

ギシリと唸るチェアーに体重を預け、手の平を顔に当てた。
悔し涙が止まらない。
臨也は、こんな自分の性格に嫌気が差していた。
こんな最悪な事態に陥られなければ、ただの一言も言えないと気付いた自分に。

「ちくしょう!」

ガシャアアアン!
…ビリッ バシュ!

臨也が手を振り乱し、デスク上の機器が雪崩のように落下して電気が飛び散る。
手に付くものは全て投げ飛ばした。
本棚が雪崩れようが、窓ガラスが割れようが、臨也は一心不乱に乱れた。



…ただ、会いたかった。








「臨也?居ないの?」

その数時間後、臨也のマンションへ波江が訪れた。
合鍵を持っていた彼女だったが、ドアが半開きだったのを見て怪訝な表情で中に入る。
破壊された内装を見た彼女は、息を飲み込んだ。
土足のまま廊下を突き抜けると、デスクの上に、セルティの首と札束が置かれてあるのを見つけた。

「ッ!…!?…何なの!」

砕け散った器機たちを何度も跨り、辺りを探しても臨也の姿は見当たらない。
もう一度デスクに戻ると、札束の隣には殴り書きのメモが貼られており、手にとって見てみると其処にはこう書いてあった。

『今まで世話になったね。君は誠二君を愛していると言う真実を素直に伝えてくれ。これは餞別。  折原』

札束には目も暮れず、波江はセルティの首を睨むように見下ろした。

「…」

憎い恋敵を、臨也は託すと言う。
それがどう言う事か、今の彼女には計り知れない可能性が秘められていた。
そして、メモを手の平で握りつぶし、掠れる声で呟く。




「…バカな男」


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