歪んだ純愛10 | ナノ


歪んだ純愛 10

目の前に映った光景は、信じがたいものだった。

『どういうことだ!?』

ネブラ研究所の最奥、厳重なセキュリティを抜けて訪れた部屋には、首の無い静雄の身体が既に朽ち果てた状態で横たわっていた。
影も全て解かれており、寝台は血に染まっている。

『違う!私は本当に何も!』

臨也はその惨状を目に焼き付けて、脈を計る新羅がこちらを向いて首を振った瞬間、目を伏せた。

『まさか、生を拒絶しているのか?静雄…』
「セルティ」
『話しかけないでくれ!』

血塗れの身体に伏せて泣く彼女の背中に、手の平を当てた。

「俺の身体、使えないかな」
「!何言って…」
「シズちゃんの首と、俺の身体を繋げることが出来たら」

セルティは立ち上がり、臨也の頬を平手打ちした。

パンッ

『出来るわけないだろう!お前が死ぬじゃないか!』
「…それでも良い」

君の身体として生きれれば、それで。

『お前達をそんな不可思議な存在に出来る筈ない!出来たとしてもしない!静雄もお前も、化け物じゃない、人間なんだ!』
「…それは本当に不可能ってことなの」
『そうだ!私は神じゃない!私は…親友に何もしてやれない、無力な存在だ…!』

握り込んだPDAがミシミシと唸る。 この時、セルティの影も色濃く叫んでいた。
新羅が彼女を抱き締め、怒りにも似た表情を浮かべている。

「君が居なければ静雄はとっくに死んでた。無力なんかじゃない、自分を責めるのはやめておくれよ!」

その光景を見て、臨也は決意した。

「二人とも、迷惑かけてごめん。身体は、先に埋葬しよう」

澄んだ表情で、真っ直ぐに二人を見据えた。

『…臨也?』
「首の方は影を受け入れているんだよね?君が傍に居なくても大丈夫ってこと?」
『…ああ、私の使える限りの能力を留めているからな。ただ、私が近くに居る方が永らえる。』
「そう」

臨也は一つ頷く。

「俺は情報屋で良かったよ。こんなくそったれた仕事が最後に役に立つかもしれない」

首を腕に抱いて、頭を撫でる。

「君に全て捧げる手続きをしておく、今まで有難う」
「臨也?」

臨也は静雄の首をセルティに手渡した。

「少しの間、シズちゃんをお願い」
「!?臨也、何する気なの」

声を荒げる新羅を無視し、二人に背を向けてドアの方へ足を向ける。

「…最後まで足掻いてみるよ。必ず迎えにくる」
「臨也!無理だ!ネブラでさえそんな奇跡起こせないのに!」

臨也は足を止め、ゆっくりと振り返った。

「!」

その時の臨也は、決意の表情をしていた。

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