◎歪んだ純愛 9
あれから、落ち着くまで大分と掛かってしまった臨也だったが、新羅とセルティには事の全てを説明した。
静雄が告白してきた事。
覚悟を決めて、自ら死ぬことを選んだという事。
それから…
『臨也も…静雄が好きだったんだな』
「好きって言葉一つ言えないで、死んでたら元も子もないんだよ!馬鹿だよ!二人とも大馬鹿だ!」
『私の力で死者を蘇らせるなんてことは出来ない。出来る限り、長く鮮度を保つ事くらいだ。まぁそれも、静雄だから出来た話なんだが…再生も不可能だ。細胞組織なんかは私の手には負えない…』
セルティの身体からゆらりと流れ出ている影が、静雄の首からも尽きることなく溢れている。
臨也は片時も離さずに首を抱えていたが、こうしていつまでも持てるものではない。
「シズちゃんの身体はまだ埋葬も何もしてないんだよね」
「そうだよ、でももう時間の問題だ…施した技術も、のち腐敗が進むだろう。指はどうする?神経はもう無理だろうけど、繋げる事くらいは出来る」
「いらない」
小さく即答する臨也の隣に、新羅は座った。
肩に手を置くと、臨也がこんなにも細かったのかと怖くなった。
「…静雄くんが離さないから?」
「指なんかくれてやるよ」
『それなんだが、私の力で取ろうとしても、何故か拒否されるんだ…。』
「どういう意味?」
『首は上手く影を受け入れてくれるんだが、身体の生命維持に施している影の方は中々厳しい…このまま素直に死を受け入れているような気がして。まぁ、そんなのは、私の直感でしかないんだけど』
静雄の頭は首の切れ目の先まで、とくんとくんと血の通った温かさを臨也に与え続けている。
「…何も食べてないでしょ、いい加減何か口にして」
新羅が肩を揺するも、首を左右に振る臨也。
「それより、身体があるその部屋に連れて行ってくれないか」
「…臨也」
『判った、行こう。』
セルティが即座に頷くと、新羅もまた、腰を上げた。
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