歪んだ純愛8 | ナノ


歪んだ純愛 8

今日は日差しがとても心地良い。
窓から差し込む光が二人を照らしていた。

「昔、高校時代にこんな風に君の頬を触った事があるんだ。君は補習を終えたあと寝ていたから、覚えてないだろうね」

臨也はベッドに座り込んだまま、膝に静雄の首を置いた。
撫でた頬は柔らかく、生きているように思える。

「その時から、君を殺そうと思ったんだ。懐かしいな」

両手で包み込むと、吸い付くような肌に眩暈を覚えた。

「思えば俺の全てを持っていかれた瞬間でさ。君の存在は、人間を愛している俺の、最大の汚点だと思った」

瞼を摩ると少し眼球が動くのが判る。

「煩わしいなんて…シズちゃんのせいじゃないのにねぇ」

笑顔がなくなり、喉を熱くさせる。

「俺の負けだよ」

くしゃ、と金髪が指に絡んだ。

「負けで良いから」

額をくっつけて、涙を零す。

「もう嘘付かないから」

嗚咽が混じり始める。

「もう誤魔化さないから、意地も張らないから、お願いだから」

臨也の両目から、大粒の涙がぱたぱたと静雄の頬に流れた。
それはまるで、静雄が泣いているみたいに映っている。

「シズちゃん、聞いてる?」

そして、たまにこうして笑って呼びかけた。

「ねぇシズちゃん」

いい加減、その気に喰わない目で俺を睨んでさ、
『クソノミ蟲!』って罵れば良い。

ほら、その方が君らしいしね。

「ハハハ」

かき抱いても身体は無い。

「アハハ…ハ」

漆黒の影が渦巻くだけ。
生命維持を未練がましくしているだけ。



ドアの向こうでは、二人が肩を震わせて泣いていた。


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