◎歪んだ純愛 8
今日は日差しがとても心地良い。
窓から差し込む光が二人を照らしていた。
「昔、高校時代にこんな風に君の頬を触った事があるんだ。君は補習を終えたあと寝ていたから、覚えてないだろうね」
臨也はベッドに座り込んだまま、膝に静雄の首を置いた。
撫でた頬は柔らかく、生きているように思える。
「その時から、君を殺そうと思ったんだ。懐かしいな」
両手で包み込むと、吸い付くような肌に眩暈を覚えた。
「思えば俺の全てを持っていかれた瞬間でさ。君の存在は、人間を愛している俺の、最大の汚点だと思った」
瞼を摩ると少し眼球が動くのが判る。
「煩わしいなんて…シズちゃんのせいじゃないのにねぇ」
笑顔がなくなり、喉を熱くさせる。
「俺の負けだよ」
くしゃ、と金髪が指に絡んだ。
「負けで良いから」
額をくっつけて、涙を零す。
「もう嘘付かないから」
嗚咽が混じり始める。
「もう誤魔化さないから、意地も張らないから、お願いだから」
臨也の両目から、大粒の涙がぱたぱたと静雄の頬に流れた。
それはまるで、静雄が泣いているみたいに映っている。
「シズちゃん、聞いてる?」
そして、たまにこうして笑って呼びかけた。
「ねぇシズちゃん」
いい加減、その気に喰わない目で俺を睨んでさ、
『クソノミ蟲!』って罵れば良い。
ほら、その方が君らしいしね。
「ハハハ」
かき抱いても身体は無い。
「アハハ…ハ」
漆黒の影が渦巻くだけ。
生命維持を未練がましくしているだけ。
ドアの向こうでは、二人が肩を震わせて泣いていた。
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