歪んだ純愛6 | ナノ


歪んだ純愛 6

まるで、スローモーションのようだった。

静雄の両手が、臨也の右手を持ったまま自分の首を薙いだのだ。
ナイフは肉の果てを訪れた瞬間、鈍い音を立てて折れた。
反動で臨也の右手の小指は千切れ、静雄の身体の方が持って行ってしまっていた。
首は左下に落ち、身体は右斜めに崩れていく。
身体から噴射した血が臨也の全身を赤く染め、臨也は考えるよりも先に解放された両手で何とか落下する頭を受け止めた。
痛んだ金髪が血と一緒に指に絡む。 小指がなくなっていても痛みはなかった。
痙攣している身体が、神経がまだ生きているからそうなっているだけなのだと、判っているのに、…判りたくない。
だって、臨也は咄嗟にコートを脱いで首を覆い始め、必死で止血を試みたのだ。


「冗談はやめてくれ」


止まれ、止まれ、と心の中で繰り返しながら思い切り抱き締める。
血に濡れているが、静雄は微笑んだままの顔で、安らかに目を閉じている状態だった。

「シズちゃん」

自宅マンションにあるセルティの首とはワケが違う。
本当に感じた死の瞬間、臨也の背後に威圧感のある影を感じた。

「血が止まらない、止まらないんだ、シズちゃんのくせに、血が止まらないんだ、止まらない」

黒い影が静雄と臨也を瞬時に包み込む。

「頼む、何でもする、お願いだから、お願いだから、止まらない、血が止まらない、頼む」

臨也は今にも死にそうなほど叫び狂っている。

「死ぬな、死ぬな、お願いだから、シズちゃん、シズちゃん、シズちゃんシズちゃん、シズちゃん、ごめん、ごめん、嫌だ、シズちゃん」


ズォオオオオオオオ!


温かくも冷たくも無い漆黒の影が、静雄の血溜まりを掬い取り、二人一緒に覆いつくした。

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