◎歪んだ純愛 2
「セルティ、頼む、何でもする、お願いだから、お願いだから」
デュラハンである私、セルティ・ストゥルルソンは「死を予言する存在」であり、近くして死ぬ者の出る場所に現れる。
そう、私は気がつけば此処に居た。
目の前に映る人間は、あの臨也だった。
少し前に、気に入らない内容の運び屋をさせられたばかりで、あの皮肉な口先は人を弄ぶ為に動いていたというのに。
眉目秀麗で冷静沈着、素敵で無敵な情報屋…そんな姿は、今其処にはなかった。
前屈みに何かを抱えており、背中が極端に丸くなっている。
漆黒の姿に合わさった赤黒い折原臨也。
…頭から全身、血塗れだったのだ。
肩が震え、泣いている。
「お願いだから」
そして私は見た。
その抱えているモノを。
『…!』
捨てたのだ。
彼自身は全てを捨てて、私にそれを懇願していた。
気付けば私の影が動いていた。
身が大きく震える。
今私が此処に居た奇跡を、
見えない糸を感じ手繰り寄せ、今この場で、私にしか出来ない事を、切に想った。
あああああああああああああ!
何処かで、私は私の叫び声を聞いた気がする。
首が無いのにも関わらず、だ。
言いようのない想いが影を増幅させる。
そう、私は自分の意志で、初めて臨也の為に動いたのだ。
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