ゼロ→ムゲン3 | ナノ


ゼロ→ムゲン3


そして、臨也は身体ごと少し離れる。

「…で?」
「はぁ…はぁ。なに、が」
「俺は男だよ。しかもあの、折原臨也さんだよ」
「からかってんのか…!」

ふざけたところで、静雄の顔は真剣だった。
ああ、面倒くさい。
何時も通り喧嘩になれば丸く収まるのに。
…そう思っていたいのはどうしてだろうか。

「…今まで散々殺すだの嫌いだの言ってたくせに」

“どうして?”

声にならない声が、バスルームに木霊した。
静雄から言わせれば、そんなもの、この状況なら一目瞭然だろうと。
何を意地悪しているんだと、苛立った。

「もっと、してぇ…。テメェこそ!気持ち悪く、ねぇのかよ…?」
「参ったね…」

臨也は臨也で、少しばかり考えていたのだ。
喧嘩の相手として、存在をキープするのと。
何かを変えて、存在を消すのと。
まさかこういう形で静雄から変化させられるとは、…本当のところ悔しささえ覚えている。

「男ってね、抱いちゃうと俺のものって勘違いするんだよね。単純だから」
「…ッ」
「女もね、好きじゃなくても抱かれたら、この人のものになったって相乗効果で好きになっちゃうんだよ」
「俺は抱かれなくても今テメェが好きだ」

少し怒った風に会話の間に入る。

「…いや、違うって。俺とシズちゃんが…まぁ、あり得ないと思ってたことだけど」

言葉を濁す。
静雄の首後ろに腕を回して、引き寄せた。
耳元に唇を寄せる。

「エッチしたら、…もっと…おかしくなっちゃうかも。それって怖いよね?」
「…ッ」
「で…絶対に無理だと思ってたのに、今出来るかもって思ってしまった俺も…おかしいよねぇ」
「!臨也…!」

ばしゃっ

静雄が上から覆いかぶさってきた。
勢いよく唇に噛み付かれ、臨也は自然と口を開けた。
ぴちゃ、と口内から唾液の混ざる音がする。
2時間前までは殺し合いをしていた筈なのに、世の中何が起こるか判らないものだ。

薄い臨也の舌先が静雄の口内を的確に愛撫する。
身体をびくつかせて必死に舌を絡める静雄に、小さく笑いを含ませながらも応えていく。

「シズちゃん、脱ぐの手伝って」
「え」
「俺の、もうガチガチ…苦しいんだよね」

ベルトに手を掛けていると静雄の喉が鳴っているのを耳にした。

「雰囲気に流されたなんて後から言っても、俺とシズちゃんの仲だから…判ってくれるよね」

小さく呟いて自分を守って見せた。
言い訳は建て前であり、臨也の手法でもある。
だってこんなケースは初めてなのだ、滅多と見れない天敵の様子に心躍らないわけもないだろう。
一時の過ちで、すまして欲しい。
俺は男は好きじゃない。

でも…

ああ

…自分自身も相当余裕がないらしかった。


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「片手で、一緒に握りこんで…そう」

太ももまでズボンをずらした状態で互いのソレを擦り合わせた。
同じものがついているというのは判っていたが、色も形も大きさも違う。
静雄が臨也のを見た瞬間、息を呑んだ様子を見逃さなかった。

「大きすぎだろ…」
「いざ、や」

今にも達してしまいそうな静雄のソレは、脈が浮いてさぞ苦しそうだった。
余裕のない天敵を見るのは久しぶりかもしれない。

「…シズちゃんの握っててあげるから。腰下ろして」

臨也の言った言葉に対し、わけがわからないと言った風に、快楽で顔を歪ませる静雄が首をかしげた。

「なん…?」
「ズボン全部脱いで、ローションは?」
「っ、ポケットに…」

水に濡れた服はずいぶんと重さを含んでいたが、静雄は軽々と脱ぎ捨ててポケットをあさり出した。
そしてミニボトルのローションを取り出し、蓋を開けるまでは素早かった…のだが。
そこからどうしていいか判らない。
迷い顔で臨也に視線を向けると、眉を顰めながら小さく言い放たれた。

「…自分の股に塗ったくるんだよ」
「…ッ、判っ、た」

言われたままボトル傾けると、とろり、と透明の液体が身体を伝った。

「バスタブ狭いから、膝折って、そう…ここで俺の擦って」

ここ、と言った際に、臨也の細い指先が静雄の臀部辺りを撫でた。
案の定ビクリと静雄の身体は跳ね上がる。

「ひっ」
「ていうかどこで手に入れたの?ソレ」
「と、取立てに、行った…ソープで…ッ」

喋りながらもぎこちなく腰を動かし始める静雄の、その光景を不思議な気持ちで臨也は見上げた。

「女に、もらった…」
「随分と用意周到だねぇ、こうなるって判ってたみたい」

それが少し、悔しい。
シャツだけを羽織った状態の静雄は、白いシャツがお湯で透け、肌に張り付いていた。
引き締まった身体が、いつもならしない動きを臨也の真上で繰り広げる。
臨也は客観的な気分で見上げつつ、静雄のソレを掴んでいた。

ぬる… ぬるっ

初めてであるのに、静雄の腰使いは適確だった。
震えながら顔を真っ赤にし、股に感じる感触を記憶していた。

(臨也の、すっげぇ、かたくなって…るッ)

「やっぱり女じゃないから、硬いねぇ股」
「!入れて…イイ、ぜ?…い、いら、ねぇか?」

さらっと聞いてしまった静雄だったが、返事のない臨也に痺れを切らし、薄く目を開けると、冷たい視線でこちらを見上げる臨也の赤い瞳とぶつかった。
その瞬間、

どくっ

「!?あ、ああ、あああ…ッ」
「…ん!」

意識せず、臨也の手の内で達してしまった。
勢い良く出た静雄の精液は、浴槽内と、見事、臨也の顔に飛び散っていた。

「?!い、いざや」
「目…開けれない」

ほんの少し怒っているように感じる声音に、慌てて濡れた指先で拭った。

「わ、わりい…」

自分の精液が臨也の顔に飛び散っているなどと、謝ってはいるがとんでもない欲情に駆られていた。

「あーあ…男に顔射された…」
「ッだから悪かったっつってんだろ」

臨也のまぶたに飛んだ精液を静雄は指の腹で拭う。
すると、臨也は反対側の目を開けて、眉間に緩くシワを寄せながら問うた。

「嬉しい?」
「あ?」

動揺した静雄を見て、臨也の口角が上がる。

「好きな男にぶっ掛けた感想は?」
「テメェ…根性ひん曲がってるな相変わらず…ッ」

嬉しいに決まっているが、やけくそになって反論すると、臨也はバスタブ外に転がっていたシャワーを手に取り、コックを捻って顔に向けた。
精液を洗い流している最中も、静雄の視線は臨也の身体に向けられている。

「うえ…まさか他人の精液嗅ぐはめになるなんて」
「…そんなにくせぇかよ」
「あのね、そうじゃなくて、男として一線越えちゃったなぁって話」

びしょ濡れのまま流し目をされると、今居る場所を再認識してしまう。

「で、シズちゃん」
「…ああ?」

ばしゃ…

臨也はバスタブに腰掛けると、静雄に向かって足を開いた。

「俺、イッてないんだけど」
「!」

“できるの?”

試すように見下ろした。
自然に静雄は跪いた。
臨也にとってはさぞかし気分の良い図なんだろうが、かの静雄は気持ちに気付いた時点でそんなことはどうでも良かったのだ。
そっと、臨也のソレを握りこみ、口を開けた。

「ッ」

静雄の舌先が触れた瞬間、臨也の腰が少し引いた気がしたが、お構いなしに舌を這わせた。

「んっ…安心、しろ…潰さねぇように、気をつける、から」
「ハハッ…冗談でもきつい、ね」

ひくついた声を聞いて少しばかり傷つきながらも、違うことを考えた。

(だって、これがないと、困るだろうが。)

そんな野心を秘めつつ、愛しそうに頬張った。

「…なんか、不思議な気分。凄いね」

口角を上げて蔑む声音ですら、今の静雄には効かなかった。

「んっ…んっ」

じゅぷ じゅぷ

やり方など知るはずもない愛撫に、ただ懸命に気持ちよくなってほしいというだけで口を動かした。

(下手だな…)

臨也は冷めた気持ちで見下ろしていると、静雄の下肢がまた硬くなっているのを見てしまった。
無意識に足を伸ばし、踏んづけた。

「ッぐ!」
「しゃぶって興奮したの?」
「…っ…ッるせー、な!!」
「へぇ」

真っ赤になりつつも睨みあげてくる強い目に、何故かゾクりとしてしまった。

「臨、也…」
「口休めないでくれる?萎える」
「…ッ。だったら、さっきの…もう一回試せよ」
「…さっきのって、素股のこと?」

じっとこちらを睨むように見上げる静雄を見て思わず鼻で笑った。
手で制して、いらないと意思表示をする。

「でも、てめぇの、硬かった」
「ッ」

図星だったのか、臨也の眉間にシワが強く寄ったのを静雄は見逃さなかった。

「ッじゃあいいよ、フェラ下手くそだし、せいぜい頑張れば?」

少し上ずった声でそう言われ、ニッと笑った静雄が臨也の背中に手を回した。

「なっ」
「バスタブ、せめぇから」

いとも簡単にお姫様抱っこをしてバスタブから出ると、静雄は臨也を抱えたまま斜めがけられていたマットを足で倒した。
ローションに塗れた身体は直ぐにマットも濡らしてしまう。
きゅっ、と音を鳴らしながら、臨也を背中からマットへと下ろすと、ふて腐れた顔が目に入る。

「?なんだよ」
「…軽々抱っこなんかしてさ、何なの」
「?いいだろ、別に…」

わけが判らないといった風に怪訝な顔をすると、臨也はぷいっとそっぽを向いてしまった。
しばし沈黙が流れ、萎え始めている臨也のソレを見つけてしまうと焦りが生じた。

「…てめぇも脱げよ、いい加減っ」
「っ!」

びりぃッ
振り向いてもらえない悔しさに勢いあまって力をこめ過ぎたのか、
案の定、臨也の服が真っ二つに裂けた。

「ちょっ、と…何して…!」
「わ、わりい」

だが、服を破ってしまったことよりも、臨也の胸が露になったことに視線が釘付けになってしまった。
臨也は短く息を吐き、諦めたのか破れたVネックを投げ捨て、自らズボンをずらして脱いだ。

「…ッ」

言葉を交わすわけでもなく、静雄も這いついたシャツを脱ぎ捨て、
横たわる臨也の上を跨いで座る。

ぬるっ…

「いざ、やの…また、かて…ぇっ」
「喋ってる暇あるなら腰動かせば」

やけくそになっているように思える臨也らしくない言動だったが、
静雄はそれどころではなかった。
身体は正直だ、男でも、俺にこんな風になるなんて…嬉しかった。

ぬるり

(…やっぱり男の股なんて最悪だ)

臨也は冷めた気持ちで、蒸気で濡れた天井をぼんやり見つめた。
なのに、上で揺らめく静雄を視界に入れると、何故か込み上げるものがあった。
だから戸惑っているのだ。

「…ッ」

(一生懸命腰振ってさ、何やってるの、ホント…冗談じゃないよ)

両手で顔を覆った。
辛かった。
徐々に感じてきている自分自身も、何を言われても懸命にしている静雄も。

(シ、ズ…ちゃん)

「うっ、あ…」

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