視界トリップ。3 | ナノ


視界トリップ。3



―その日の帰り道、静雄は帰路に急いでいた。

(ちくしょう、ぜってぇ変に思われた、よりにもよってあんな奴に…っ)

腕を組みながら大股で歩く。
前をあまり見ずに歩いている所為でぶつかりそうになるが、静雄の存在を確認した人だかりは勝手に避けてくれる。
だが、避けてくれない者も居るのが現実で。

「うぶっ」

黒い影にぶつかり、静雄はよろめいた。

「ってぇ…どこ見て歩いて…!」
「それはシズちゃんの方じゃないかなぁ?」
「!!!!」

声を聞いて、頭の中が真っ白になる。
直ぐ目の前には、昼過ぎに望遠鏡で此方を捉えていた犯人、折原臨也が、手の届く先に佇んでいた。

「ッ…てめぇ!」
「おぉっとぉ」

胸倉を掴むと、周囲に居た者達が注目してきた。
それに舌打ちをし、引っ張って路地の脇へと足を向ける。

「痛い痛い、引っ張らなくても歩けるよ」
「うるせぇ!ちょっと顔貸しやがれ!」

---------------

「どういうつもりだ」
「何のこと?」

何でも知ってるような顔をして、知らないふりをする臨也に静雄の眉間には血管が浮きでてくる。

「何で昼間、あんなところで覗き見なんざしてやがったんだって聞い」
「シズちゃんを視姦していただけだよ」
「は?」

素っ頓狂な声を発し、胸倉掴む手が止まった。
華麗に払いのけられ、臨也が顔を近づける。

「個人の自由でしょ?俺が観察をしようが、シズちゃんがエッチな妄想をしようがさ」

ん?と挑発するように顔を覗き込んでくる。

「な、な、なんで…それ」
「ずっと視てたから」
「視て、た…?ずっと、だと…?」
「今日はどこで?電車?家?あの屋上だった?何人くらい?」

むぎゅっ

「ひ、ぁっ」

臨也は舌なめずりをしながら、静雄の尻を両手で強く鷲掴みにした。

「こぉんな風に…乱暴にされちゃった?ねぇ、教えてよ」
「あ…ぁ、何」

そして、いやらしく撫で回すと、静雄の頬に赤が散った。

(なっ、に…触ってんだこいつ…!?)

「触んじゃ、ねぇ!」

その様子を確認してから、臨也はさっと身体を離してその場を駆けた。

「フフ、またね」

色を含んだ声を出し、静雄を振り返った。

「!臨也、待て!このっ…」

追いかけようとしたが、股間が痛くてしゃがみこんでしまった。

「っ」

ドクドクドク

「はぁ…はぁ」

初めて他人に触られた。
頭の中ではなく、現実に。

(やめろ…ッ)




それからというもの、静雄の妄想に劇的な変化が起こった。
認めたくないが、それが事実で、静雄は強く目を閉じるしかない。
エレベーターの中、静雄は最上階を目指していた。
途中で黒い影の男が一人乗り込んでくる。
静雄は端にその大きな身体を寄せ、頭の重みを壁に任せた。

『…』

すると、目線を横にしてみれば黒い影がぴったりと密着していた。
突然胸を弄られ、衣服を左右に引き裂かれる。
ボタンが飛び散り、ベルトを無理やり剥がされたが、静雄はそれを冷静に眺め、息が上がるのをただ待っている。
直に触れられると、胸の先端が硬くなった。
気付けばもう下肢は形を成していて、大きく膨れ上がっている。
エレベーターは果てしなくずっと上がり続けていた。
影は静雄の右腿を持ち上げ、突然挿入した。
此処ではすんなりシーンが切り替わり、都合の良い快楽だけが散らばっている。
なのに、

『もうこんなにして…、エッチだね』
『!?』

目を開いて影を確認すると、影が臨也に摩り替わっていた。

『シズちゃんの穴、凄い締め付け。…救えない化け物だ、この淫乱』
『なっ、何で』

立ちかなえで下から突き上げられている状態のまま臨也は余裕そうな笑みを向けていた。

『シズちゃん無理やりされるの、好きだもんね?俺がしてあげるよ』
『やっ、やめ…!』
『どうして?俺にされるの、嫌?』

打ち付けられる強い腰つきが気持ち良過ぎて信じられなかった。
静雄は目を瞑って首を振る。

『ああっ、ああ、ん…!駄目だ、それ…ぇッ』

乱暴なのに、気持ちが良すぎてどうにかなってしまいそうだった。
気付けば背中から床についており、股を大きく広げて臨也の身体を引き寄せていた。
更に、臨也が深く入り込む。

『い、いざやぁ…!気持ち良い…、もっと…』
『エッチな君には、お仕置きが必要だね。抱き殺してやるよ』

低く囁かれ、触れてくる唇に、ゾクゾクとした。
何度もキスを交わすが、気付けばその行為は、妄想でも初めてだった―。
乱暴にされて、たまらない。


頭の中でも、臨也は静雄に意地悪で、甘い毒のような存在だった。

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