セクスティニエ 4




「てめぇ、ちゃんと食ってんのか?」

「?食べてるよ。波江のやつ、最近なかなか上手だし…。
 “本当は誠二に作ってあげたいのよ、貴方は毒味役よ”って、毎回言ってくるんだよね。
 この手の女って一言多いよねぇ」


真似をしながらペラペラと喋る臨也。
静雄はそんなことよりも、“波江”と聞いてムッとした顔をする。

「ッそいつともヤってんのかよ?」

その意外な返答に、臨也は目を見開く。


「え、なに、ちょっと!知ってるでしょ?助手だよ、助手」

「はっ、どうだかな」


余裕のなさそうな嫉妬丸出しの表情を素直に向けてくる。
…臨也には決してできないことだ。
それに対して嫉妬しているとは、静雄は絶対に気づいていないだろう。


「…チッ」

「あ!?てめぇ!何舌打ちしてんだよ!」


部屋に入った途端、抱き上げていた臨也をベッドに投げつけた。
直ぐに追って重なり、二人で沈む。
バウンドするベッドは静雄が今までに見たこともないサイズで、倒れこんだ勢いで何度か身体が上下する。
静まってから顔を見やると、互いに睨み合っていた。


「ベッドでも喧嘩したいのかな?」

「ハッ!良いぜ?俺は自慢じゃあねぇが、
 てめぇと会った日はいつもより回数多いんだからな」


拳を鳴らす仕草を見上げ、臨也はまた目を見開いた。

(それって…)

素直に曝け出す静雄をどう受け止めばいいのか悩むところだ。


「暴力は性的興奮とリンクしてるからねぇ」

「あ?なんだって?」

「それって俺をそういう目でずっと見てたって事だよね?」

「…ッんな!何で知って!」


面食らったような驚きように臨也こそ驚く。


「ちょ、何それ!わざとなの?馬鹿にも程があるよ」

「るせーな!バカバカいうんじゃねー!」


びりぃっ


「!」


襟首を掴んで引っ張った瞬間、臨也のVネックが見事に裂ける。
小さく主張した左側の突起が目に入った途端、静雄は絶句した。


「…ッ!」


その様子を臨也はこれでもかというほどに目に焼き付けた。

(ああ、楽しいなぁ)

楽しいから、からかってやろう。


「俺って結構神経質でね、この寝室に誰かを入れたのは初めてなんだよ」

「…!」


静雄の表情が緊張した。

臨也は静雄から目線を外さずに、肌蹴た胸元へ両手の指を這わせる。


「俺の乳首、小さいだろ」

「ッ…ああ…すげぇ…かわいい」


そして、そのまま両手で胸を中央に寄せるフリをし、甘い声で言ってみせる。


「“おっぱいおっきいほうがすきだった?”」

「なっ!」


その絵面に、静雄は本気で赤面した。


「ち、小さくても好きだ」

「………あのね…」


半ば呆れているのよそに、静雄は恐る恐る手を這わせてきた。


「…っ、シズちゃんの手、あったか…」

「……っ」


壊さないように、震える手で撫でては形を確認してくる。

一人でしているとき、臨也の身体を想像したことはない。
この未知な体験に喉が鳴った。


「シズちゃんはどんなカンジ?触って良い?」


答える前にはもう両手を伸ばし、シャツ越しに的確に先端を摘まれた。


「ひぁ!」

「すご、もう立ってんじゃん。硬いよ?」


初めて触られる感触に、首筋がきゅっと緊張する。

細い指先が器用にボタンを外し、臨也の目の前に静雄の肌が露になった。
黙り込んでる臨也に不安を感じた静雄は、恐る恐る尋ねる。


「俺の色…変、か?」

「んーん。高校から変わってないね。見事なサーモンピンク」


わぉ、と真顔で感動している臨也に一先ず安心する。


「高校からって…」

「出会った当初、ナイフで胸元切ったときあったでしょ?あと、プールとかでも」


きょとんとしている静雄を見て、口角が上がる。


「デリカシーないって言わないでね」

「あ?」

「今まで見てきた中で、一番綺麗な色してるよ」


正直に答えると、『てめぇ!何言ってんだ!』などと言われると思っていたが、静雄の口からはまたもや想定外な答えが返ってくる。


「だって、誰にも触られたことねぇし…」


「え」 5秒ほど、だろうか。 ぽかん、と開いた口がふさがらなかった。


「まさかとは思うけど…童貞?アハハ!マジで?」


ガバッと起き上がり、腹を抱えながら臨也は愉快そうに笑う。


「…悪ィかよ」 「いくら俺でも性生活までは知らない…っていうか、知りたくないからねぇ」


手で顔を伏せ、一通り笑い終えたところ、チラリと赤い目を向けてきた。


「何でかなぁ、それ、…凄く良いね」

「…あ?」


「辛かっただろう?性欲が強いのに、誰ともしたことないなんて」

「別に…ッ、俺は好きでもねぇやつとはしたくねぇ」


ベッドの上であぐらをかき、そっぽを向いた。


「だから、嬉しいって言ってるんだよ」

「っ」


臨也のほうへ顔を向けた途端、目の前でこちらを覗き込む目とぶつかる。

ピチャ…


強引なキスをただ受け止めるだけで必死だった。


「んんんっ」

「キスもはじめて…?」

「んっ、んんっ」


小刻みに頷くと、臨也はとても優雅に笑んだ。
まるで何かを得たような、『人間らしくない』微笑だった。


「じゃあ、全部、俺のものだねぇ」

“フフ、うれしい”

「!」


その声だけで、背筋が戦慄いた。


「全部脱いで」

「ぜ、ぜんぶ?」

「そう、全部」


囁くように命令される。 静雄はおずおずとベルトに手をかける。
下半身が今どうなっているかなんて見なくても判る。  

堅く腫れ上がっているせいで、脱ぐのだけでも痛く、辛い。


「良い身体だなー」

「見るんじゃねぇよ…」

「どうして?これからもっとスゴイことするのに」


ぴくり、とパンツを下ろす手に躊躇いが生まれた。
臨也が細く長い足をパタつかせながらこちらを凝視している。


「い、臨也…だから、そんな見」

「はやく」


ぐりっ


臨也の右足が伸び、パンツ越しに静雄の下半身を踏みつけた瞬間、

「ッ!!」

びくっ



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